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複製防止の音楽CD 音楽ソフト大手に欧米で抗議運動

2002/02/04 16:09

週刊BCN 2002年02月04日vol.927掲載

 MP3で始まりナップスターの敗訴で終わったかのようにみえた音楽ソフト業界を襲ったインターネット革命の激震のマグマが、ここにきて再び活性化し始めた。世界の音楽ソフト大手が複製防止技術を搭載した音楽CDを欧米で試験的に製造。これに対し欧米の一部消費者や家電メーカーが激しく反発し始めているのだ。

 複製防止技術の多くは、CDに記憶されるデジタル信号の1部の整合性を壊すことによって、ステレオなどの音響機器では再生できるがパソコンでは再生できないようにする。パソコンは音響機器に比べ、より正確にデータを認識するので、少しでもデータに整合性がなければ、音響機器で再生できるCDでもパソコンで再生できないからだ。

ところが、これまでに発売された数多くのCDプレーヤーの中にはいろいろな性能のものがあり、一部の音響機器でも再生不可能な場合があるということが報告されている。

こうした事態に欧米の消費者団体が反発。英国の「デジタル権利キャンペーン」は、人気歌手マイケル・ジャクソンの新曲のCDが複製防止CDであることが分かったとして、ウェブ上で不買運動を組織。その一環として昨年10月に英国の8都市で28人のボランティアが約7000枚のチラシを配っている。

このCDの発売元は米国に本社を置くソニー・ミュージック・エンタテインメント。同社は、このCDが試験的に製造されたもので、配布先はラジオ局限定で一般消費者に迷惑をかけるものではないとする声明を発表している。

ほかのレコード大手も正式には複製防止CDを発売していないというが、消費者団体のサイトなどには英国で20タイトル以上、米国で70枚タイトル以上の複製防止CDが発見されたという報告が一般ユーザーから寄せられている。

これらの報告では、再生不能の原因が本当に複製防止CDにあるのか、ユーザーのパソコンや音響機器にあるのかは分からない。だが、消費者の間でレコード会社に対する不満が高まっていることは事実だ。

ナップスターのユーザーは全世界で7000万人もいたという。音楽ソフトを自由にコピーできるという楽しみを満喫していた多くのユーザーにとって、音楽業界がナップスター提訴という形でその楽しみを奪ったわけだ。知的財産権保護という道理は理解できても、音楽業界に対する反発の感情は残ったようで、その反感が今回こういう形で吹き出したという見方ができる。

ソニーと共にCDの規格を共同開発したオランダの家電大手フィリップスは、複製防止CDは純粋なCDの規格に準じていないとして、CDロゴマークの使用中止や注意書きの明記を要求しているという。

MP3に代わる著作権保護機能付き技術はこれまでにいくつも開発されているが、どれも事実上の業界標準になれないのが現状。パソコンや音響機器メーカーはMP3を使って音楽を自由に楽しめる機器をすでに多く発売している。今後こうしたメーカーからの反発も予測される。

音楽業界はより一層慎重な対応を迫られている。
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