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リクルートイサイズ 情報仲介に“原点回帰”

2002/05/13 16:18

週刊BCN 2002年05月13日vol.940掲載

独自資産活かし、メディアミックス

 個人向けECやバナー広告は難しい――。リクルートイサイズは、リクルート本来の情報仲介ビジネスに立ち返る。イサイズは1999年の開設当初、総合ポータルとして出発し、書籍や音楽CDの販売などを含め、最盛期で40種類のチャンネル(番組)を開設した。だが、4月から順次、番組数を減らし、現在は10種類となっている。イサイズビジネスを統括する山本創・エグゼクティブプロデューサーは、「広告情報をコンテンツに変えるリクルート独自の強みを活かし、雑誌との連動を重視したサイトにする」と、新しい編集方針を打ち出す。

 イサイズ開設以来3年余り、最も事業の立ち上げが難しかったのは、個人向けの物販ECやバナー広告依存型のビジネスだった。山本氏は、「書籍や音楽CD、衣料品など物販を試みたが、意外に伸びなかった。バナー広告はもともと重視していなかったので仕方ないが、それにしても伸びなかった」と振り返る。物販ECでは価格比較サイトなどとも提携したが、うまくいかなかった。

 イサイズの昨年度(02年3月期)の売上高は380億円。リクルート全体の売上高が3000億円前後であることから、イサイズ事業だけで全体の約12%を占めるまでに成長した。今年度(03年3月期)は420億円(全体に占める比率約15%)を見込む。成長の原動力になったのは、なんといっても就職情報の分野。次ぎに住宅情報が続く。そのほか、旅行、結婚などの分野が有望だ。これらはもともとリクルートが雑誌で強い分野であり、ネット上でも本業の強さが如実に表れた。

 これを受け、いつまでも全方位で数多くの番組を揃えるのではなく、強い部分だけを残し、その分野を積極的に伸ばす。「ヤフーなど総合ポータル分野では、バナー広告やECで競合する。だが、一方で、ヤフーに就職情報や結婚情報などを提供しており、ほかにもグーやMSNなどにも多くのコンテンツを提供している。これら総合ポータルは『競合』ではなく、『パートナー』としての関係を強化する」と話す。

 「パートナー」といえども、イサイズはヤフーなどのポータルに料金を支払ってコンテンツを“掲載”している。普通に考えれば、ポータル側が「コンテンツを購入する」のではないかと思うが、実際の金の流れは逆だ。

 山本氏は、「彼らポータルは集客力という強みがある。もちろんイサイズ自身でも集客するが、ポータルが集める客数は、お金を払ってでも割りが合う。イサイズの事業計画は『3年間で300億円を目指す』というものであり、現在の売上規模は、計画値よりも上をいく」と、採算性を強調する。

 とはいうものの、「われわれは、本業である情報仲介型のコンテンツでいかに実収益を上げるかに注力すべき。個人向けECの市況やバナー広告の相場を気にするのではなく、むしろマクロな目で就職や住宅市場の動向、旅行や結婚、自動車需要を鋭く観察し、この方面から収益を上げることに主軸を置く」とし、本来の情報仲介ビジネスに立ち返る。

 イサイズ、ヤフーという2大サイトは、これでほぼ棲み分けが完了した。情報誌というリクルート独自の資産をネット上でも活かすイサイズ。集客力があるヤフー。「競合するのでなく、互いに補完し合うことで、本業の強みを発揮する」と、今後のイサイズの進むべき方向を位置づける。

 アドレスは http://www.isize.com/。
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