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ソニー 企業市場開拓に本腰

2003/05/26 19:20

週刊BCN 2003年05月26日vol.991掲載

「個人の生産性向上」テーマに展開

 ソニー(安藤国威社長)は、これまで手薄だった企業マーケットの開拓に本腰を入れ始めた。企業内個人の能力向上に照準を合わせ、「Empower the People(エンパワー・ザ・ピープル)」のソリューション販売に力を入れる。同社の商品体系は多様だが、「撮る、貯る、送る、見る、認証といったビジネスで必要とされるすべての機器をもっており、一気通貫ソリョーシュンをグループの総力を挙げて提供していく」と、平本隆夫・業務執行役員ソニーIT&モバイルソリョーシュンズネットワークカンパニーブロードバンドコミュニケーションカンパニープレジデントは方針を語る。

 ソニーは、個人市場と放送局など一部特定市場では高いブランド力とシェアをもっているが、手薄だったのが企業向け市場。過去、電卓、UNIXマシンなどで何度かこのマーケットに挑戦してきたが、市場環境の変化などから軌道に乗せられなかった。

 個人向けパソコンでは一気に台頭したものの、企業向けは強い販売ルートをもたないこともあり、苦戦を強いられてきた。

 ソニーから見れば、企業市場は「残された巨大マーケット」ということになるだけに、今回この市場開拓に本気で乗り出す決断をしたものと見られる。

「基幹システムをもたないと企業市場では成功しないとの見方もある。しかし、当社はそうは思わない。基幹システムによる生産性向上には限界があることが、この数年で見えてきた。いま必要なのは新たなドライバーであり、それは企業で働く個人の生産性・創造性の向上に集約できる。技術は、アナログからデジタル、IPネットワークの時代へと大きく変革中で、ライフスタイルも変化している。オン(ビジネス)とオフ(ホーム)をネットワークでシームレスにつなぐことが、個人の生産性・創造性向上には絶対必要だ。ソニーはこうしたユビキタスコミュニケーションの時代をリードできる技術、ソリョーシュンをもっており、AV(音響・映像)技術とITネットワークの融合により、新しいワークスタイルの提案を行っていく」(平本業務執行役員)という点を基本戦略とする。

 「撮る」製品群としては、カメラ/コンテンツ制作、「貯る」製品群ではポータブルファイルサーバー(FSV-PGX1)など各種ストレージ、「送る」製品群はビットドライブネットワークなど、「見る」製品群は各種ディスプレイを商品化しており、ソリョーシュンに合わせてこれら商品を有機的に組み合わせて提供していく。

 具体的ソリョーシュンとしては、データ・映像・音声会議などを組み合わせた「企業内コミュニケーション」、カメラとIPネットワークを組み合わせた「IPモニタリング」などの販売に力を入れる。

 今後注目されるのは、販売網づくり。AVとITネットワークの双方に強い販売会社というのは現状では数少ないだけに、この隘路をどう打開するかが焦点となる。
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