世界の家電メーカー約2400社が集う新春恒例「国際家電見本市(CES)」(ネバダ州ラスベガス)が米現地時間の9日閉幕した。今年は動員数14万人を超えるともいわれており、年明けのラスベガスを大渋滞に陥れ、ブースの移動に30分、新導入のモノレールはすし詰め、会場フロアはWiFiがダウンするなど例年にない混乱と盛況のうちに幕を下ろした。

 CESは、元はといえばステレオとテレビの新製品がちんまり並ぶ展示会に過ぎなかった。それが今や展示フロア面積は米最大、1240億ドルの家電市場を代表する世界最大のマンモスショーとして、家電からコンピュータ、エンタテインメント、ネットワーク、通信、ブロードバンドまで幅広い分野で影響力を及ぼすイベントとなった。

 かたや斜陽に転じたのは1990年代を通して見本市の王座に君臨したコンピュータ万博「コムデックス」だ。コムデックスバブル崩壊後の出展&ビジター数の激減により深刻な経営難に陥り、昨年11月の秋季から開催中止に追い込まれている。

 コムデックス中止後初のCESということで今年は注目が高まったが、イベントを主催する米家電協会(CEA)のゲリー・シャピーロ事務局長は、「参加者数で言うならコムデックスはとっくの昔に死んでいた。コムデックスの中止でこちらのビジター数が増えたとは考えていない」とクールな対応。「今年は動員数を12万人と控え目に発表したが、それはコムデックスの参加者が全員こちらに流れることを嫌った戦略でもある。コムデックスが一般参加も可能なパブリックなショーなら、こちらは業界関係者向け。しかるべきビジネス上の関心がある人だけ参加してもらえる」と違いを強調する。

 そんな強気な発言も“なるほど”と納得してしまうほど、最近の家電は好調だ。CEAがCESで発表した最新統計によると、04年は家電製品の売上高が前年から11%伸びて約1135億ドル。今年も同様の伸びが予想される。

 全体としてコンピュータの販売が低迷するなか、昨年はパソコンの開祖であるアップル・コンピュータ(翌週にマックワールドが控えているため例年CESは不参加)でも、携帯音楽プレイヤー「iPod(アイポッド)」の売り上げが昨会計年度比334%伸び、コンピュータ部門の3分の1に迫る勢いとなった。コムデックス無き“後”のCES人気は、コンピュータという基幹の技術が一定の成長を遂げ、家電の一構成要素として組み込まれる成熟のフェーズに入ったことを象徴する“主役交代劇”とも言えそうだ。

 今回のCESでは、ユーザーのハードに貯まりに貯まった写真や映像、番組録画など各種デジタルコンテンツを、今後茶の間でどう楽しんでいくか、その場合の主役となるデバイスは何か、標準は何か、といったテーマに例年通り関心が集まった。テレビでは高品位(HD)テレビ、ビデオではデジタルビデオレコーダー、新サービスではマイクロソフトの反スパイウェア導入計画、TiVo(ティーボ)の録画番組をパソコンに転送して見れる新サービスなどが注目材料だ。

 ところで余談だが、初日を飾ったマイクロソフトのビル・ゲイツ会長の基調講演ではプレゼンテーションの最中にウィンドウズが2度フリーズするハプニングで満場の会場を喜ばせてくれた。

 最初は写真のスライドショーで機能が停止し、司会役のコナン・オブライアンが「マイクロソフトの責任者は誰なんだ」と首を回してゲイツ会長と目が合うギャグで笑いを取ってクリア。が、悲劇はそこでは終わらず、新型X-Boxのカーレースのデモでは、プログラマーの誰もが恐れる“BSoD(Blue Screen of Death=死の青いスクリーン)”とともに「メモリが足りません」との警告メッセージが飛び出し、再び笑いの渦に…。

 まさに会長にとっては悪夢の“青い夜”となったが、同様のハプニングは初めてではない。ゲイツ会長はかつてコムデックスでウィンドウズ98を発表した際にもBSoDしている。

 なぜ「天下のビル・ゲイツ会長の大舞台で?」と首をかしげたくもなるが、03年夏に会長本人が語ったところによれば、「ウィンドウズの5%は平均1日2回の割合でフリーズする」というから、それがたまたまコムデックスの新製品発表であったりCESの開幕基調講演であったりするだけで、フリーズそのものは特別なことではない。会長には気の毒と言うよりほかないが。(市村佐登美)