オンデマンドプリンティング推進委員会(吉田一博代表)は5日、東京ベイ有明ワシントンホテル(東京都江東区)で、「PODジャパン・コンファレンス2005」を開催したが、ヒューレット・パッカード(HP)、富士ゼロックス、コダック、EFIの各代表者による基調講演とパネルディスカッションが行われ、各社POD(プリントオンデマンド)の将来性に強い自信を示した。プリントオンデマンドは、DTPなどで作成されたデジタルデータを製版工程を経ずに直接印刷するデジタル印刷技術で、複雑多岐な印刷工程のデジタル化の最終形とされる。商業印刷分野で利用が進み出しているが、欧米に比べると、日本での利用は遅れている。

■複写機メーカーも参入

 オフセット印刷に比べPODのアドバンテージは、①小ロット印刷、短納期に有利、②1枚ごとに内容を変えた印刷(バリアブル印刷)が可能、③1つのデータから通信機能を利用して複数の出力機を動かす分散印刷が可能――などにあるとされる。

 現在の主な用途は、少量生産用のマニュアル、納期が厳しい新製品のカタログ、CRM(顧客情報管理)などグループごとに内容を変えるDM(ダイレクトメール)印刷、チラシの分散印刷などである。

 オンデマンド印刷機のメーカーとしては、既存の印刷機材メーカーに加えて、複写機メーカーなどが参入を始めており、競合は激化の一途をたどっている。当面、ワールドワイドで見ると、今回の基調講演に参加したHPのインディゴ・デジタル・プレス・ディビジョン、富士ゼロックス、コダックのグラフィックコミュニケーションズグループなどが市場をリードしている。日本国内では理想科学工業の「ORHIS(オルフィス)」などがこのジャンルの製品に該当する。

 基調講演とパネルディスカッションは、①紙は今後も重要な媒体であり続けるのか、②なぜデジタルプリントテクノロジーに高いアドバンテージが期待できるのか、③クロスメディアマーケティングの在り方、④CRM戦略――などをテーマに行われた。

■商業印刷が最も高い伸び

 市場の現状については、EFIのガイ・ゲットCEOが、「デジタル印刷のマーケットとしては、個人や家庭で利用するパーソナル環境、オフィスなどで複数の人間が共有するワークグループ環境、印刷業者や社内の出力センターなど専任スタッフを置いているプロダクション環境に分けて捉えることができるが、市場規模が圧倒的に大きいのはプロダクション環境だ。世界規模でA4換算の印刷枚数を推定すると2004年で761億枚の規模になり、88%はプロダクション環境で印刷されている。国別に見ると、米国が49%、西ヨーロッパが18%、日本が11%を占める」と総括した。

 この分類によると、日本の複写機/プリンタメーカーが強いのは、パーソナル、ワークグループ環境で、最も市場規模が大きいプロダクション環境では富士ゼロックスなど一部メーカーをのぞき存在感は薄いことになる。

 具体的な数字については、HPのアロン・バルシャニ・インディゴ・デジタル・プレス・ディビジョンバイスプレジデントが、「HPの前年度売上高は850億ドルだが、複写機/プリンティング事業を担当しているインディゴ・デジタル・プレス・ディビジョンは260億ドルの売り上げだった。家庭、オフィス、エンタープライズ市場をターゲットにしてきたが、第4の柱としてグラフィックアート、いわゆるプロダクションサイトに注力を始め、伸び率は最も高い」と言及した。

 また、市場動向については、富士ゼロックスのアーノルド・リンクウェット・マーケティングオペレーション&グラフィックアーツ製品サービス事業グループゼネラルマネージャーが、「ワールドワイドで見ると、エンドユーザーが支出する印刷経費は1兆2000億ドルといわれる。グラフィックコミュニケーションなど新しい技術、新しいビジネスモデルを確立すれば、市場規模は2倍になるだろう。富士ゼロックスはこの10年市場のリーダーとしてやってきたが、ここで学んだことはオフセット印刷の代替をアピールすることでなく、PODはオフセットとは補完関係にあるということだ。PODは、印刷だけでなくもっと可能性の世界を開くことができる」と指摘した。

■2010年に新たな波

 パネルディスカッションで司会のチャーリー・コア氏(InfoTrends/CAPVentures社)は、「期待が大きい割には普及スピードは鈍いのではないか」と問いかけたのに対し、HPのバルシャニ副社長は、「当初POD市場に積極的に参入してきたのは、ベンチャー系企業で、われわれのような大手メーカーは品質や用途の面でもうひとつ自信が持てず、様子見の時代が続いたが、10年ほど前に本格参入を果たして以降は、市場の将来性に絶対の自信を持っている。市場はまず欧州で顕在化、米国でも普及を始めている。日本は遅れ気味だが、来年には普及期に入るだろう」との見解を示した。

 また、富士ゼロックスのリンクウェット・ゼネラルマネージャーは、「エンドユーザーの声をもっと適切に理解することが必要だ。金融、製造業など業種によってニーズは異なるので、ワークフローまで含めて業種の知識を高めていかなければならない」と指摘した。

 コダック社グラフィックコミュニケーションズグループのカゼム・サマンダリ・トランザクション&インダストリアルソリューションズグローバルセールス&マーケティングエグゼクティブバイスプレジデントは、「PODでは、マーケティング、経理などさまざまな部門が関与してくるようになった。これが商談に時間を取られる1つの要因になっている。コストも安いし、きれいだし、早いということをもっとわかりやすくユーザーに伝える努力が必要だろう」と述べた。

 将来については、コダックのサマンダリ・エグゼクティブバイスプレジデントが、「2010年頃に新しいイノベーションが起こり、書籍や新聞もPODの対象になるだろう」と指摘したのが注目された。