【サンフランシスコ発】米マイクロソフトは11月1日(米国時間)、今後の命運を握る無料のオンラインサービス「Windows Live」と「Office Live」を発表した。その翌週、ビル・ゲイツ会長から幹部社員一同に宛てて新トレンドへの早急な対応を訴えるメールが送信されるなど、IT業界に新たな動きが起こりつつある。

 ビル・ゲイツ会長とソフトウェア&サービス部門の最高技術責任者(CTO)を務めるレイ・オジー氏は11月1日、多くの報道陣を前に新サービス「Windows Live」と「Office Live」を発表した。従来までパッケージソフトウェアとして提供していた製品を、オンライン経由のWebアプリケーションとして提供するのが、両サービスの狙いだ。

 ウィンドウズとオフィスはユーザーにはすでに馴染みのある商品だが、別にウィンドウズというOSやオフィスというアプリケーションが、Webブラウザを介して利用できるわけではない。

 Windows Liveは一般ユーザーやビジネスユーザーが普段PCで利用しているアプリケーション、例えば電子メールやインスタントメッセージング(IM)、アンチウイルスなどを、Webブラウザ経由で提供するものだ。

 一方のOffice Liveは、ビジネスマンが同僚とともに業務を円滑にすすめるためのもので、例えば、グループウェアのような情報共有ツールや財務管理などの基幹業務システムなどのアプリケーションが提供される。

 そのほかに、Office Liveでは、中小企業がWebで情報発信を行うためにレンタルサーバーやドメイン取得代行などのサービスも用意している。

 マイクロソフトでは、このほかにホビーユーザー向けのオンラインサービス「Xbox Live」を以前から提供しており、この3つの“Live”サービスをあわせて「Live Services」と呼んでいる。今後は3つの市場をターゲットにしたオンラインサービス戦略を推し進める計画だ。

 Windows LiveとOffice Liveは基本的に無料で提供され、広告収入などをベースに運営が行われる。またOffice Liveでは有料契約のオプションも用意しており、契約ユーザーにはさらに追加でオンラインアプリケーションが提供される。

 ソフトウェアのパッケージ販売やPCメーカー経由のOEMと呼ばれるプリインストールでユーザーから直接対価を受け取っていたマイクロソフトにとって、無料のオンラインサービスに本格的に乗り出すのは非常に大きな戦略転換となる。しかし同社は、オンラインサービスが近い将来主流になり、従来型のソフトウェアに固執していては大きなビジネスチャンスを逃すことになると考えているようだ。

 そうした不安は、ゲイツ氏がLive Services発表後に、同社の幹部社員に対して送ったメールによく現れている。同メールを入手した米国の報道機関各社によれば、そこにはマイクロソフトが、1995年に従来型のパソコン通信事業から脱却し、インターネット重視へと大きく舵を切った時以来の大転換が起こりつつあるという内容が記されていたという。

 技術革新によりインターネットを介して提供されるアプリケーションの使い勝手が向上するなか、グーグルなどの新興企業の勢力が拡大しつつある。グーグルはOSなどのプラットフォームにはこだわらず、Webブラウザさえあればどこからでも利用できるような便利なツール群を次々とリリースし、ユーザーや開発者の支持を集めている。

 もしこのままアプリケーションの多くがオンラインで提供されるようになれば、マイクロソフトがこれまで苦心して作り上げたソフトウェアやプラットフォームへの求心力が弱まってしまうことになる。

 またゲイツ氏と同時に、前述のレイ・オジー氏からもメールが送信されたといわれている。そこにはマイクロソフトが警戒すべき新世代企業としてグーグル、ヤフー、アマゾン、スカイプ、アドビなどの企業名が列挙されていたという。どのネームも、オンラインの世界ではマイクロソフトに勝るとも劣らぬ技術と実績を持ち合わせた企業だ。

 マイクロソフトが3つの「Live Services」を本格的に展開する06年は、同社にとって10年ぶりに本気で勝負する年となるだろう。(鈴木淳也)