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逆風SONYの憂うつ TOOLkit問題でつまずく

2005/12/12 12:47

週刊BCN 2005年12月12日vol.1117掲載

 【サンフランシスコ発】「iTunesミュージックストアを一緒にやらないか」とジョブズが出井元会長を誘ったのは2004年1月、ハワイのオープンゴルフトーナメントでのことだ。これをむげに断ったのがケチのつき始めだったのだろうか。iTunesは先月タワーレコードの売上げを抜き、ソニーはTOOLkit問題でボロクソに叩かれている。

 もうご存知だと思うが、ソニーBMGの音楽CDを再生するとソニーのプレイヤーが自動的に起動し、ユーザーの知らないところでウィンドウズの中核プログラムにrootkitがインストールされる。プリンストン大教授が見つけ、ソニーのツールを使って除去しようとしたところ悪さをし、「ソニーはウイルスをばらまいてるんじゃないか」と激怒した。

 この報道が引き金となって集団訴訟が起き、警察当局が捜査に乗り出し、ベンダーがウイルスと認定。アマゾンが問題のCDの販売停止を決め、ソニーは製造停止・リコールを発表した。そんなものではまだ足りないと、米国では製品ボイコットも起こりそうな勢いだ。

 そんななか、マイクロソフトは“1台売るごとに赤字が出る”次世代型ゲーム機「Xbox 360」を22日に全米リリース、在庫切れの嬉しい悲鳴をあげている。来年6月末までに55万台を売り、同月発売予定の任天堂レボリューションとソニーPS3に壊滅的なダメージを与え、100億ドルのゲーム市場で首位を目指している。

 「BMGはBig Mistake Guysの略か」(サンノゼマーキュリー)とまで言われているソニー。たった2年前まではジョブズの方から頭を下げる会社だったのが、まるで嘘のようだ。結局彼らは既存の音楽業界の作法と枠組みから抜け出せないということか。日本人としてはこの難局を乗り越えて、また素晴らしい製品を世界に送り出して欲しいのだが。
市村佐登美(米在住ジャーナリスト)
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