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中国産CPU「鳳芯2号」を開発 独自映像標準AVS普及を後押し 06年上期にもSMICで量産を開始か

2006/01/16 12:50

週刊BCN 2006年01月16日vol.1121掲載

 【北京発】2006年上半期に量産が始まる中国の独自開発CPU「鳳芯2号」は、同じく中国独自の映像標準AVS普及の切り札となるチップだ。しかし、鳳(おおとり)の翼がはばたく前から担っている期待はあまりにも重い。

 中国科学院計算所が05年11月30日に開催した一般向け研究所開放イベントで、同所は中国独自の映像コード技術標準であるAVS(Audio Video coding Standard )のIPコアを無料で公開すると発表した。

 より多くの企業を呼び込んでAVS産業を発展させたいという考えだ。しかし、この日はさらに業界をわかせる発表があった。

 中国が自主開発したCPU「鳳芯(Feng xin)2号」のお披露目である。

 「鳳芯2号」は、AVSだけでなくISOとITU-Tによる国際標準規格であるH.264をサポートする。中国ではPC向けのCPU「龍芯(Long xin)」をすでに開発済みだが、「鳳芯」は映像機器向けのチップだ。

 その「鳳芯2号」は、独自に開発された複数の標準を処理できるコーディング技術を採用しており、微細化レベルを高めることでチップ面積を30%以上縮小することに成功した。

 開発の主体となった寧波(ニンポー)中科集成電路設計センター(浙江省)によると、AVS 1.0.H.264/AVC main profile標準との互換性はすでに実証済みであり、解像度1920×1080のフォーマットもサポート可能となっている。

 「鳳芯」の開発が始まったのは03年。当初は資金面などで中国科学院の支持を受けて進められたが、04年からは国の予算に頼らない体制をとろうと方針を転換。開発拠点を北京市から浙江省・寧波(ニンポー)市に移し、ユーザー企業のニーズを汲み取りやすい体制をとった。

 寧波市では市政府の支援を獲得することに成功し、研究はよりユーザーに近い環境で進められた。今後は06年初めにも独立した新会社を設立し、産業化を図っていく予定だ。

 寧波中科集成電路設計公司の徐・総経理によると、資金調達作業は04年から開始しており、すでに海外資本との接触もあるという。中国国内では、寧波市の民営企業が数千万元を投資したいという意向を明らかにしている。

 「鳳芯2号」の量産は早ければ06年上半期(1─6月)にも開始される予定で、価格は10ドル以内になるものとみられている。受託生産を行なう企業については明らかにされていないが、業界関係者の間では中国最大の半導体ファウンドリー(受託生産会社)である中芯国際集成電路製造有限公司(SMIC)ではないかとの見方が強い。生産開始後の初期生産数はウエハー6000枚程度になる見込み。

 中国科学院計算所の孔華威氏は、「鳳芯2号の登場によって、AVS標準をサポートするCPUが不足している現状を打破できる。国産エンコーディング標準の産業化に拍車がかかるだろう」としている。

 また、中国ではIPTV(インターネットプロトコルテレビ)の普及を促進する動きが加速しているが、特に映像コード技術標準は中核的技術として注目されている。

 中国の大手ポータルサイトである新浪網のオンラインアンケートによれば、回答者(約1.6万人)の72.6%が「鳳芯2号は外国メーカーの同等品に対抗し得る」と答え、「太刀打ちできない」の17.4%を大幅に上回っている。また、「鳳芯2号は中国製IPTVチップの欠如をカバーすることができるか」という問いに対しては、じつに69.6%が「できる」と答えており、「できない」と答えた19.4%を大きく上回った。(サーチナ・森山史也)
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