【上海発】新華社上海3月7日の報道によると、三菱電機は中国携帯電話市場からの撤退を決定し、上海、北京、広州の事務所と杭州にある工場を閉鎖するという。中国市場で相次ぎ撤退を余儀なくされている日本メーカーの誤算は、何が原因だったのか。

 かつて三菱電機の携帯電話は、おしゃれ、機能が豊富というイメージで中国でも多くの消費者から人気を得ていた。しかし今年2月になると、同社の主力であるM800機種は、従来の3000元から1500元程度まで価格が下がり、半額になったにもかかわらず、あまり売れていない。これは、東芝、松下電器産業の撤退に次ぐ、日系携帯電話メーカーの「敗走」とメディアが伝えている。

 昨年4月に、東芝は経営不振のため、中国企業との合弁会社「南京普天王芝通信有限会社」から資本を撤退することを発表した。合弁会社のCDMA(Code Division Multiple Access)携帯電話の製造、販売業務は中止され、親会社のリストラを待つことになった。合弁して5年、利益を生まないままこの結果を迎えた。

 2005年12月には、松下がGSM(Global System for Mobile Communications)携帯電話の生産・販売を止めるとともに、従業員1400人をリストラすることがメディアに公表された。これは同社が赤字を削減するための戦略調整で、今後、中国での携帯電話の生産は全面的に3G(third generation)に切り換えると発表した。

 同じ難局に直面しているNECは他社とは異なる戦略を打ち出し、今後、2000元以上のハイエンド市場をターゲットにする方針とされる。競争が激しい中国携帯電話市場では、むしろセグメント化した戦略が賢明といえるかもしれない。ただし、認知度が高いハイエンド製品メーカーのモトローラ、ノキア、サムスンからマーケットシェアを奪うのは容易なことではないだろう。

 日本市場で外国メーカーを寄せつけない日本の携帯電話メーカーは、なぜ中国市場で悪戦苦闘しているのだろうか。

 まず、無線通信技術の違いが、多少影響を与えている。中国では、日本特有のPDC(Personal Digital Cellular)スタンダードではなく、ヨーロッパ方式のGSMスタンダードを採用している。CDMAも存在しているが、GSMと比べると、はるかに数が少ない。この点で、欧米企業が優位性を持っている。

 また日本では、メーカーはキャリアの下請けのような役割で、販売は電話会社のチャネルに依存している。中国では、端末とネットワークビジネスは分離することが前提で、中国全土で販売チャネルをうまく作らない限り、売れるわけがない。実は、日本メーカーは販売部隊を持っていないだけでなく、チャネル構築もうまく展開できなかったのだ。

 さらに、新製品が市場に出た際に、必要なマーケティング活動も十分ではなかったようだ。R&D(研究開発)センターが日本に構えられているためか、製品の種類が少なく、開発サイクルも長く、製品が市場動向に遅れることはよく指摘される。

 携帯電話メーカーのみならず、日系企業共通の課題といわれるのが管理上の問題で、「現地化」が足りないという指摘がある。トップマネジメントチームにはローカルのマネジャーがほとんどいないのが現状で、中国市場を理解しているとはいえず、現地作戦力が弱い。そのうえ、現地法人は日本の本社からコントロールされているケースが多い。報告ラインが長くなる一方、意思決定に時間がかかる。また、柔軟性の足りない管理システムは、時には優秀な人材をとどめる障害になると思われる。

 中国市場は、おそらく世界一オープンで、そして競争も一番激しい。世界中の携帯メーカーが顔を揃え、生き残るために力を尽くして苦闘している。ローカル企業も負けずに、ミドル・ローエンド市場を舞台とした低価格戦略で、外国メーカーと戦っている。進出が遅く、市場がよく分からなかった日系メーカーにとっては、このような状況はきっと予想外で、対応策も適時に打ち出せなかったのだろう。

 しかしながら、日系携帯電話メーカーの競争力、特に技術上の優位性は無視できない。日本メーカーは各社とも今回の撤退を一時的なものと位置づけるだろう。次世代(3G)携帯市場で再度世界に挑む決意については明言していないものの、その姿勢は堅いように思える。中国で3Gスタンダードが決まるまで長い時間がかかったが、今年ようやく決定されることになった。

 3G携帯電話市場において日本の携帯メーカーには少なくとももう一度チャンスが訪れるはずである。
魏鋒(ウェイ・フェン=ACCS上海事務所担当、shanghai@accs.or.jp)