【北京発】2006年は中国の「第11次5か年計画」がスタートした年だが、これとは別に、政府は2020年までの「国家情報化発展戦略」を発表した。中国が一流情報国家に脱皮する意欲を世界に知らしめたこの「戦略」は、国の威信をかけて開催する北京オリンピックを成功に導いて、GDP額4倍増計画を実現するためのツールでもあるようだ。

 中国政府はこのたび、「総合情報インフラの普及」や「情報技術における自主刷新能力の増強」「情報産業構造の全面的な改善」などを骨子とする、2020年までの「国家情報化発展戦略」を発表した。

 情報産業の強化と情報社会化の促進が最重要課題のひとつと位置づけたというわけだ。そして政府は「まず隗より始めよ」を実践するかのように、党組織や政府自体の「情報化」に並々ならぬ熱意で取り組み始めた。のみならず、これまで民間企業主導で進められてきた「情報化」の流れに自ら勢いをつけるような行動をとり始めた。5月22日に政府情報産業部がマイクロソフト社との間で調印した「中国のIT産業育成に協力する」主旨の覚書もその一例だといえよう。

 一方、中国共産党第十六回全国代表大会は「全面的に『小康社会』(いくらかゆとりのある生活)をつくる」という目標を設定した。その数値目標は「2020年までに、国内総生産を00年比4倍にする」というものだ。

 しかしこれを実現するためのハードルは決して低くない。

 情報産業についていえば、生産基地としての役割が継続して拡大していくこと、第3世代(3G)携帯電話サービスやデジタル放送の開始などが起爆剤となって新たなニーズを生み出すこと、新技術の登場によって新たな市場を創出することなどが求められよう。しかし、08年に北京オリンピック、2010年に上海万博が控えていることは何よりの好材料で、これらの国家的イベントは「戦略」の節目にもなっている。

 注目されるのは、情報社会の根幹を支えるソフトウェア産業の成長だ。

 世界的にみれば、ソフトウェア・情報サービスが電子情報製品市場に占める割合は40%程度といわれているが、中国においてはわずか7%程度にすぎず、発展の余地はまだまだ大きい。近年、中国でもプリインストールタイプのニーズが急速に高まっており、ハードウェア製品の生産額に占める割合も増加傾向にある。またソフトウェアサービスとSIの業績の伸びはソフトウェア製品そのものより急速であり、情報化社会の進展に伴って今後も急成長が見込まれている。中国のITメディアも2010年には12%になると予測しているほどだ。

 コンピュータおよびネットワーク製品をみると、90年代中頃から急速に発展したものの、00年には安定成長に推移し、現在は20%程度の成長率となっている。

 急成長期の背景には突然ともいえるコンピュータの登場があったが、富裕層を中心とする消費者への普及は一段落したとみられるため、今後は買い替え層をターゲットとする新たな需要を開拓することが不可欠だ。

 中国政府が大きく「情報化」促進に踏み出したことによって、IT産業と関連マーケットには、今後様々な変化が生じることが予想される。消費者の「情報(機器)」全般に対する購買意欲も、08年の北京オリンピックに向けて大きく高まっていくだろう。

 中国の情報産業からは、ますます目が離せそうにない。
森山史也(サーチナ総合研究所)