【北京発】中国の家電大手「海爾(ハイアール)集団」は、2005年まで3年連続で「中国電子情報企業トップ100(電子信息百強企業)」ランキングのトップの座にあったが、今年はその座を「聯想(レノボ)」に明け渡した。しかし中国の家電業界における同社の存在感は依然として圧倒的なものがある。そんなハイアールの董事局(役員局)副主席が、急成長を実現した同社の企業カルチャーの一端を語った。

 急成長を遂げたことで知られる中国の家電大手「海爾(ハイアール)集団」の母体は弱小の一国営企業で、かつては借金で従業員の賃金を賄うようなこともあった。しかしそんな弱小メーカーは、わずか21年間のうちに、世界トップ500入りも夢ではない年間売上高1039億元(約1兆4900億円)の大企業にまで成長した。

 06年の「中国電子情報企業トップ100(電子信息百強企業)」では首位の座を「聯想(レノボ)」に明け渡したとはいえ、中国の産業界における存在感はいささかも揺らいでいない。そんなハイアールの成長力の源泉はいったいどこにあるのか。このたび北京で行われた上述の「トップ100」表彰式の場で、同社の武克松・董事局(役員局)副主席がそのあたりについて語った。

 「企業ブランドを創出するには、ブランド精神が必要だ。ブランド精神とは何か。企業の魂にほかならない。ではハイアールの魂とは何かと問われれば、『顧客ニーズに応える』の一言に尽きる。ハイアールはこの21年の間、まずは海外からの技術導入を図り、次いで国産化率を高めて製品輸出を拡大し、海外生産に乗り出してきた。それもこれも『顧客ニーズに応える』ためだ。これまでの導入技術のブラッシュアップとイノベーションのために莫大な資金を投下してきたのも、すべてそのためだったといっていいだろう」

 武克松副主席はまた、ハイアールの企業カルチャーを表す言葉として、「人単合一」を挙げた。「人」は人材、「単」は中国語で顧客からのオーダー(注文)を意味する「訂単(ディンタン)」のこと。つまり「人単合一」とは、「人材」と実際の「オーダー」を結合させるということだ。

 「ハイアールの人材は市場からオーダーを直接吸い上げる能力をもっていなければならない。しかし、真に有用な人材はオーダーを獲得することによって育つ。『人単合一』にはそんな二つの意味がある。こうした企業カルチャーが浸透しているからこそ、最短のスピードで『顧客ニーズに応える』ことができるし、さらに新たなニーズを自ら作り出すこともできる」というわけだ。

 中国国内でハイアールは「走出去(中国語で海外進出を意味する用語)」の尖兵とみなされているが、同社の「走出去」は現在も進化し続けている。その現れが、全世界の10か所に設置された拠点だ。

 しかし10拠点すべてが必ずしも理想的な基地として機能しているわけではない、という声も聞かれる。確かに、10拠点のなかには研究センターもあればデザインセンターもある、また製造拠点があればマーケティングセンターもあるという状況で、そこに統一的戦略を読み取るのは難しい。それでもハイアールは、これらの海外拠点をベースに真の「全球化(グローバル化)」を目指すという。

 はたしてハイアールは「人単合一」精神で、中国以外の「顧客ニーズ」にも応えきれるだろうか。ハイアールの成長神話が文字通りの神話で終わるかどうか、企業カルチャーの真価が問われるのはむしろこれからだ。
森山史也(サーチナ総合研究所)