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韓国のVoIP市場 KT、メモリフォン事業に進出 ブルートゥースによる無線で 大手参入で市場は激変か

2006/08/07 17:59

週刊BCN 2006年08月07日vol.1149掲載

【ソウル発】 KTはPCにUSBを差し込めばインターネット電話(VoIP)が使えるメモリフォン事業に乗り出す計画だ。キャリアのLGテレコムが携帯から固定電話料金で電話をかけられるサービスを開始し、KTもより値段の安い電話サービスを求められていた。

 固定電話サービスの独占事業者であるKTがVoIPにまで乗り出せば、インターネット電話市場への影響はかなり大きいと予想される。

 メモリフォンとはUSB保存装置にインターネット電話プログラムユーザー情報を内蔵したもの。インターネットにつながったPCにUSBメモリフォンさえ差し込めば、いつどこでもログインなしでインターネット電話を利用できる。

 KTはメモリフォン事業のためにアイオセル、KMTEC、イノステックなどUSB端末製造会社を選定し、一般ユーザーを対象に非公開テストサービスを始める予定だ。

 メモリフォンはBluetoothを駆使した無線ヘッドセットを利用する。128MBのメモリを内蔵しているので、移動型保存装置としても活用できる。

 課金はあらかじめ充電した金額分、利用時間に応じて差し引かれるプリペイド制と毎月無制限に使える定額制がある。

 USBメモリフォンは昨年下期から登場し、一部中小企業からサービスされている。KTがメモリフォン事業に関心を持つのは、個人用インターネット電話市場を攻略するためとみられている。

 KTはこれまで電話機を使うIP電話方式のインターネット電話事業を展開してきたが、IP電話は端末が高価なため主に企業が使っている。

 個人ユーザーたちはIPフォンよりは使いやすく値段も安いヘッドセット型のソプトフォンを利用している。またスカイプ、アイエムテル、ネイバーフォンなどソフトフォンサービス提供会社がどんどん増えているため、有線電話市場を奪われているKTとしては、積極的な防御が必要な時期でもある。KTはメモリフォン体験顧客を募集し、7月から8月までテストサービスを提供してから商用化計画を決める。

 韓国でインターネット電話相互接続が完了してから、KTのほかにも新規VoIP事業者のサービスが今年から本格的に提供され始めている。さらに、事業許可が一度保留されたケーブル事業者連合会の VoIP事業が許可されれば、VoIPは「トリプルプレーサービス(TPS)」の一環として注目される見込みだ。

 既存事業者のなかではDACOMがポータル事業者と連合し、着・発信できるVoIPサービスをより強化する態勢だ。DACOMはNHN(ポータルサイトNaver)と協力し、NHNメッセンジャーフォン加入者を対象に提供してきた発信用VoIP事業を着・発信できるVoIPへ拡大させる計画であり、早いうちに自社VoIPプログラムを内蔵したUSBメモリフォンの供給を始め、VoIPの大衆化に乗り出す予定だ。
趙章恩(チョウ・チャンウン=ITジャーナリスト)
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