【北京発】「百度(Baidu)」の2006年第1四半期の売上高シェアは43.9%だった。同社はヤフー中国(21.1%)や3位のグーグル(13.2%)を大きく引き離して、中国の検索エンジンでは断然トップの座に君臨している。ところが最近、このガリバー企業の内部に激震が走った。震源は組織改革に伴う従業員の解雇で、中国のインターネット業界は、この話題で持ちきりだ。

 中国検索サイト大手の「百度」が、わずか数分間の会議で一つの部門を閉鎖し、その部門の従業員を全員解雇するという大胆な人員整理を行ったのは7月10日のこと。解雇された従業員たちにとっては、まさに青天のへきれきだった。彼らは、あまりにも唐突な人員整理の経緯を、怒りを込めてただちにネット上に書き綴った。

 それらを総合すると、北京市と上海市および深市にある「百度」の企業ソフトウェア事業部門の全従業員が7月10日の午後2時に各オフィスの会議室にいっせいに呼び出され、何の前置きもなく解雇通告されたという。

 「何の事前説明もなかった」「会社の方針がまったく理解できない」。従業員たちは突然の解雇通告に驚きを隠せなかった。彼らのメールアカウントはその時点ですでに抹消されており、解雇に関する事務処理も進められていたという。

 この人員整理について、百度側は翌々日の7月12日に声明を発表した。「声明」によれば、対象となった企業ソフトウェア事業は同社の中心業務から外れた傍流であり実績も思わしくないことから、撤退するに至ったということになっている。これについて「百度」の関係者は、「通常の企業戦略の一環であり、全国で二十数名しかいない事業部を解散したにすぎない」と述べているが、解雇された従業員らは、「経営陣が犯したミスの責任を従業員に押しつけたものだ」と息巻いているというわけだ。

 「百度」の事業は、広告収入、有料リスティングサービス、企業ソフトウェアの3事業が柱とされてきたが、実際は有料リスティングサービスの収入がほとんどを占めている。今回の騒動の舞台となった、企業向けに検索情報を提供する企業ソフトウェア部門が、同社のお荷物的存在だったことは周知の事実だ。

 「百度」は7月13日に年次式典を開催したが、理性的でつねに冷静だと評判の李彦宏・CEOが、なぜ同式典の直前を選んで、物議をかもすような手段で軌道修正を行ったのか。「解雇」事件から3週間経っても依然として謎のままだ。

 しかし、「声明」に納得できない元従業員らは解雇にいたる過程を続々とブログで公開し始めた。それをきっかけにインターネット上にはさまざまな意見や憶測が飛び交い、議論は熱を帯びる一方だ。

 ある元従業員は、「百度」が5月にも電撃リストラを行っていたことをブログで明らかにした。ほかにも社内で発生した数々の事件について記述しており、アクセス数が数万件を突破し、コメントも数百件に上るという過熱状態を招いている。

 それと同時に、中国の三大ポータルサイトの一つである「捜狐(SOHU)」までが、解雇された「百度」の元従業員に対してブログ公開を呼びかけ始めた。これに対して「百度」は、こうした行為は媒体力の乱用に当たる、「捜狐」こそが今回の騒動の黒幕だと、名指しで非難するという事態にまで至っている。

 この騒動はしばらく続きそうな気配だが、ここにきて中国の有力弁護士が「事実に基づいた内容であり、かつ、百度の業務に関する機密情報が公開されない限りは、解雇された従業員が沈黙を守らなければならないということはない」と元従業員たちの発言に好意的な立場を明らかにした。今後は専門家を巻き込んだ論議にまで発展しそうな勢いだ。
森山史也(サーチナ総合研究所)