【上海発】中国市場では、「芝麻開門」(「開けごま」の意)というパッケージソフトウェアをよく見かける。ゲームや音楽などのジャンル別に、1枚のCDに大量の作品を収録し、しかも価格は10─30元(149円─447円)程度。エンドユーザに「フレンドリー」なことから、人気が高いが、権利者の利益を大いに侵害している疑いがある。少なくとも日本側の権利者はライセンスしていない作品が多いと推測される。では、「芝麻開門」の正体とは。

 tom.comの報道(http://news.tom.com/Archive/2001/8/17-50547.html)によると、2001年8月16日に、中国最大のソフトウェアディストリビュータといわれた北京正普科技発展有限公司(http://www.zhengpu.com/、以下正普公司)が、当時マーケットの90%のシェアを占めていた海賊版を排撃するために、「芝麻開門格安正規版戦略」を打ち出した。200社のソフトウェアベンダーと連携しながら、3年間の予算を1億元(14.9億円)として、「芝麻開門」という新たなブランドを普及し、庶民を対象に安い価格の正規ソフトウェア/デジタルコンテンツを販売していくと発表した。

 01年11月6日には、売り上げ100万セット突破記念発表会が行われた。代表取締役社長の姚増起氏がスピーチで公表した数字によると、同年8月20日からの79日間で、「芝麻開門」シリーズの売り上げは101万6983セットに達したという。

 しかし、どうすればここまで安い販売価格に抑えられるのかは疑問だ。例えば、56種類のゲームを収納したCDや100曲以上のMP3音楽を収納したCDを150円程度で販売できるとは、日本では考えられない。

 「知識産権律師網」の報道(http://www.iprlawyers.com/ipr_Html/07_03/2006-3/3/20060303162037417.html)によると、ワーナーミュージックとユニバーサルミュージックは05年の「世界知的財産権の日」(4月26日)に、「芝麻開門」シリーズの一つに音楽作品が無許諾で収録されているとして、出版、発行、流通、販売など各関係会社を、上海市第一中級人民法院に訴えた。

 「芝麻開門」には部分的にライセンスを受けている可能性はあるが、無許諾のほうがはるかに多いと思われる。ブログでは、この現象はあからさまな海賊版販売よりももっと悪質ではないかと疑問を呈した記事が見られる。大量の作品をCD1枚に収録させることが、ライセンサーの立場から見ればそもそもありえないし、ゲーム専用機用ソフトをPCで利用できるようにするエミュレータを同梱したゲーム特集CDを許諾するとは、考えられないことだ。

 さらに不思議なのは、ほかにも訴訟が頻発しているにもかかわらず、なぜ「芝麻開門」はこのように大きな顔をして、堂々と大手百貨店、外資系スーパー、新華書店への販路を維持できているのだろうという点だ。数々の疑問を抱えながら、「芝麻開門」シリーズは今日も、中国全土の百貨店やスーパーで、多くの消費者に売られ続けているのである。
魏鋒(ウェイ・フェン=ACCS上海事務所所長、Shanghai@accs.or.jp)