【ニューヨーク発】BestBuyやP.C. Richard & Son、Circuit Cityなど米国には数多くの大手家電量販チェーンがある。米国の小売業は、年間売り上げの25%以上を年末のクリスマス商戦で達成するといわれ、この時期が一番の書き入れ時となる。しかし、相変わらず成長を続ける一方で、大手家電量販チェーンの実態は必ずしも楽観視できない状況だ。さまざまな要因が絡み合い、抜本的な解決策の必要性を示唆している。一見好調にしか見えない状況のどこに問題点があるのか。

 米国における昨年のクリスマス商戦で小売店の売り上げは、前年同期比6%増の90億ドル近くになったようだ(Shopper Trader『National Retail Sales Estimate』より)。そのうちオンライン販売の売り上げは55億ドル弱(ComScore Networks調べ)。これは前年対比で42%の大幅増である。目玉商品は液晶テレビとプラズマテレビ。特に30インチ以上の大型製品は、液晶方式が売上高ベースで208%以上、台数ベースでは300%近い伸びとなった(NPD Group調べ)。プラズマ方式もそれぞれ63%と140%の増加と、めざましい成長ぶりをみせた。

 最終的に昨年から今年にかけてのホリデーシーズンの売り上げは、ITバブルの絶頂期でクリントン大統領の「オンラインクリスマス」の号令に沸いた1999年に届こうかという好業績となった。

 しかし、家電量販大手チェーンでは売り上げ総額は伸びたが、伸び率は期待したほどではなかった。一方で伸びが著しかったのは、MacysやNordstrom、Saksといった百貨店、ドラッグストアチェーン、そしてTargetやSearsといった一般チェーンが多かった。なかでもNordstromやドラッグストアチェーンのCVS、会員向け販売チェーンのCostcoは軒並み9%程度の伸びとなり、Saksは11%以上の伸長となった。

 一方、WalmartやGAPは店頭販売、オンライン販売のいずれも低調で、GAPにいたっては8%減と悲惨な結果であった。全体では05年同期比で約3%程度増加した。一方、オンライン販売に限れば26%増で、これまでになく明確なオンライン化への流れがみて取れる。

 ネットでアクセスが多かったのはamazon.com。それにWalmartやTargetなどの一般チェーンのサイト。さらにBestBuyやCircuit Cityなどの家電量販大手チェーンのサイトが並ぶ。販売の主流がPCや大画面薄型テレビ、ゲーム機器という構図は変わらないが、他分野の商品が急速に伸びているのが、最近の特色だ。これまでのようにIT関連や家電類だけがネット販売の中核という図式は崩れつつある。当然、店頭での値崩れは激しく、各家電販売チェーンは目玉商品に大幅な値引きを強いられる。オンライン販売で売価の下落が一気に広まるだけに、店頭販売でもオンラインショップに対しても競争力のある価格を求められることになるわけだ。

 一般家庭用品などのオンライン販売が拡大してきた背景には、インターネットの普及に伴って、習慣的に店頭で購買してきた商品でもオンラインの購入率が増えてきたという事情がある。 GAPの低迷も同様の理由とみなされる。多店舗展開で成長してきた同社だが、オンライン販売に力を入れる他社が伸びるにつれて、実店舗が足かせとなり、業績を引き下げる要因になったという分析だ。

 米国がクリスマス商戦終盤となった06年12月26日、BestBuyは中国・上海に大型店舗をオープンさせた。他の大都市にも順次出店が予定されているという。大企業の海外出店という見地から特に意外でもないようにもみえるが、米国内での市場飽和とオンライン販売での苦戦などと重ね合わせると、このクリスマス商戦に焦点を当てた出店は大きな意味を持つものとして浮かび上がってくる。米国だけでの販売に危機感を持っていることは明白だ。

 今後、他の家電量販大手が追随するものと思われるが、その手法やエリア、対象とする消費者層、商品構成はさまざまな試行が繰り返されることだろう。すでにインターネットを介しての購買に国境が事実上なくなっていることを考えると、今後、米国家電大手チェーンの動向は各国に大きな影響を与えるものと思われる。田中秀憲(ジャーナリスト)