日立ソフトウェアエンジニアリング(日立ソフト、小野功社長)は、付加価値の高いオリジナル商材の創出に力を入れる。社内に埋もれているアイデアを引き出す仕組みを充実させることで、他社にはない独自の商材開発を目指す。これまでは技術者を中心メンバーとする開発部門が商材開発を行うことが多く、顧客と接する事業部門のアイデアが十分に活用できていなかった。事業公募制度やフリーエージェント(FA)制度を積極活用することで商材の“芽”を伸ばしていく考えだ。

 日立ソフトは情報漏えい防止システムの「秘文」などヒット商品を生み出してきた実績を持つものの、「全社の利益率を大幅に押し上げるほどの品揃えになっていない」(桑原弘美・執行役副社長兼取締役)と、独自商材のバリエーションが不十分であったことを認める。この背景には商材開発を推進してきた部門が、技術開発を得意とする開発部門に偏重していたことがあげられる。

 開発部門が次々と独自商材を生み出す一方、顧客と接する事業部門からは有力商材が出づらい状況が続いていた。事業部門は業種ごとに編成されており、本来ならば市場ニーズを十分に吸収し、かつ業種のノウハウを生かした有力商材が出てきても不思議ではない。だが、実際は顧客への対応に追われ、「商材開発にまで手が回らない」のが実情だという。

 こうした問題を解決するために全社員から新規事業のアイデアを募る「事業公募制度」と、社員自らの意志で他部門へ異動することを認める「FA制度」を今年4月から新しく導入した。これまでも新規事業を立ち上げるに当たって社内から人材を募る制度はあったが、今回の新制度では“ボトムアップによる事業化を推奨する”とともに、異動の自由度をより高めることで“社員の創造性やモチベーションを引き出す”ことを狙う。

 事業公募制度では個人やチームで応募でき、事業化が決定すれば最低100万円からの賞金が手に入るようにした。事業化を審査する経営会議も随時開催することで迅速化を図る。また、FA制度の導入によって人材が大量に流出する部門が出てくることも考えられ、部門長は、「これまで以上にリーダーシップを発揮し、かつ部下の創造性やモチベーションを引き出さなければならない」という、よい意味での緊張感が生まれる。

 独自のパッケージソフトやサービスは複数顧客への販売が可能で、多く売れればそれだけ粗利率も高まる。だが、直近の受注状況を見ると顧客ごとに個別の業務システムを開発する受託開発型が売上高全体の約8割を占める。個別に開発したシステムは他の顧客への横展開が難しく、粗利率を高められない構造的な問題が横たわっている。事業公募やFAの導入によって、有望なアイデアを持つ社員は部門の壁を突き抜けることが可能になる。新たに生まれた独自商材を大きく育てていくことで収益拡大を狙う。

 同社では2010年度(11年3月期)の連結営業利益率を昨年度のおよそ2倍に相当する10%に高める経営計画を立てている。営業利益の約半分は粗利率の高い独自のパッケージソフトやサービスなどで稼ぐ考えで、今回の施策もこの一環として位置づけている。