SIerの富士通ビー・エス・シー(富士通BSC、兼子孝夫社長)は、自動車産業向けの組み込みソフト開発事業を拡大させる。これまでは携帯電話向けの組み込みソフト開発をメインとしていたが、国内外の競合ベンダーとの競争が激化。より高度な技術が求められ、他社との差別化の余地が大きい自動車産業を収益の柱のひとつに育てる考えだ。

 昨年度(2007年3月期)の組み込みソフト事業の売上高のうち、携帯電話関連が半分余りを占め、これに情報家電が続いていた。携帯電話はかつてほど伸びが期待できず、情報家電も伸び率が鈍化していることから、「引き続き堅調な開発投資が見込める自動車産業の開拓を急ぐ」(廣澤満治・取締役エンベデッドシステム本部副本部長)ことで事業拡大を目指す。

 同社の強みは得意分野を明確にして、一括請負方式で受注する点にある。他社との差別化が難しいとされる客先常駐などは極力避けてきた。現在も国内約700人を抱える組み込みソフト開発人員のおよそ8割は国内主要3拠点で勤務。ただ、自社ですべて責任を負う一括請負の実現には高いスキルが求められるため、必然的に特定分野にリソースを集中することになる。

 携帯電話ではブラウザやメール、OSなど主要部分でそれぞれ得意領域をつくり出してきた。これが原動力になって、昨年度の組み込みソフト事業の売上高は3年前の1.5倍近くに拡大。粗利率も全社平均の上をいく「優良事業」に育て上げた。

 これと同じパターンを自動車産業向けにも展開する。しかし、同社にとって実績の少ない自動車産業で一足飛びに一括請負を実現するのは難しいため、まずは自動車メーカーの直系子会社への客先常駐を2004年頃から開始。直近では一括請負できる得意領域が複数出てきた。これをテコに2年後の09年度には自動車関連の比率を組み込み事業の売上高全体の半分近くまで高める計画を立てる。

 自動車メーカーは自社のノウハウが漏えいすることを極度に嫌っており、「国産メーカーは海外メーカーに発注したがらない」傾向が強いという。このためメインの競争相手は国内の組み込み開発メーカーとなり、得意分野をいち早く打ち立てて優位性を保てば、「有利にビジネスを展開できる」と見込んでいる。

 昨年度の組み込みソフト事業の売上高は前年度比約4.9%増の約66億円。自動車関連を本格的に立ち上げることで、既存事業の伸びと合わせ今後2-3年のうちに全体で100億円規模に拡大することを視野に入れる。