技術立国日本の次代を担う若い世代にものづくりの情熱を伝承し、IT産業に優秀な人材を招き入れることを趣旨として創設された「BCN ITジュニア賞 2009」が、1月23日、東京・港区の青山ダイヤモンドホールにおいて開催された。今回で4回目のITジュニア賞は、NPO法人「ITジュニア育成交流協会」(高山由理事長)の推薦を受け、高等学校1チーム・2名、高等専門学校2チーム・2名、大学1名、専門学校1チームを選定。さらに、同協会より「高校プロコン実行委員会」が「ITジュニア育成交流協会高山理事長賞」に選ばれ、IT業界のトップベンダーが集う「BCN AWARD 2009」の会場で表彰式が行われた。(佐々木潔●取材/文)

新たな電子ブックの可能性
国立米子工業高等専門学校
「BOOK・ON」製作チーム

 第19回高専プロコン課題部門で、米子高専は「BOOK・ON」という本型入力装置を出展し、最優秀賞(文部科学大臣賞)と情報処理学会若手奨励賞を受賞。
 この作品では、円形のバーコード(サークルコード)を印刷した本のページをめくり、それをUSBカメラで読み取らせてアプリケーションを操作する画期的なアイデアを具体化した。本を開いてサークルコードが検出されればアプリが起動し、本を閉じて裏表紙をかざせば終了する。

 何に使えば有用なシステムになるのか、チーム内でも詰め切れなかったため、最初は画像ビューアとこれを応用した神経衰弱ゲームを開発し、次いで動画ビューアを追加。プロコンでは、審査員から「マンガのビューア」や電子ブックとして使える可能性が指摘されるなど、将来性を高く評価されての最優秀賞受賞となった。
仮想世界を使った斬新な影絵
国立詫間電波工業高等専門学校
「写動」製作チーム

 第19回を迎えた高専プロコンで、自由部門最優秀賞(文部科学大臣賞)に輝いたのが、詫間電波高専の「写動-シャドウ-」。
 この作品は、影絵遊びに現代の技術を組み合わせることによってその表現、利用可能性の拡大を目指したシステムで、プロジェクターを使ってスクリーンに投影された影を背後からカメラで撮影。画像処理によって動植物のアニメを生成し、さらに光によって映し出されたユーザーの影を干渉させて触れ合うことができる。すなわち、実際の影と仮想世界の影を連動させた意欲的な影絵システムだ。

 プロコン会場では、アニメ化された鳥を自分の腕に乗せたり、花吹雪を舞わせたりするデモに人気が集中し、同校のブースは人だかりが絶えなかった。仕掛けは大がかりだが、見応えのあるシステムに仕上がっていた。
癒し系パズルアクションゲーム
国立名古屋工業大学
松下浩典さん

 情報化月間推進会議(経産省・文科省など)主催の第29回「U-20(アンダー20)プログラミング・コンテスト」個人部門で、経済産業大臣賞を受賞した作品の一つが、松下浩典さん(名古屋工業大学1年生)の「草登り」だ。
 この作品は、ステージ上で入手できる植物を活用して、画面の頂点にあるゴールを目指すパズルアクションゲーム。プレイヤーは、「植える」「刈り取る」動作と「移動」「ジャンプ」が可能で、マップ上に配置されている植物の種を適切な位置に植えて足場に利用し、ゴールを目指す。

最小限のキー操作で子供から大人まで遊べるが、パズルゲームとして無駄のないマップ構成を心がけたという作者の意図が、「ゲームとしての完成度が高く、遊んでみたいと思わせる作品」と評価された。画面も美しく「癒し系」のような雰囲気がある。
音楽ゲームで楽器練習を支援
大阪府立工業高等専門学校
國領正人さん

 音楽ゲームのスタイルをとりながら、楽器演奏の上達を目指した電子弦楽器練習支援システム「STrike」で、U-20プロコン個人部門の経済産業大臣賞を受賞したのが大阪府立高専5年生の國領正人さん。
 弦楽器に限らず、PCにライン入力できる電子楽器なら大抵の楽器で練習できる。U-20プロコンのプレゼンでは、バイオリンを持ち込んでソフトウェアの動作を実演してみせた。
 審査員からは「練習中に(マウスを使わずに)楽器だけでアプリケーション操作を続行できるアイデアが秀逸」「絶対音感のない人、五線譜に挫折した人でも、ゲーム感覚で楽しく楽器の練習ができる」と高い評価を得た。

 制作に当たって苦心したのは、DirectXの取り扱い。入門書を片手に独学で奮闘した成果が見事に結実した。
高機能なプログラミング言語
開成高等学校
林拓人さん

 自分でデザインした言語を作りたくなったという動機から開発された、オブジェクト指向のプログラミング言語の「Cyan」。
 Lispのマクロ、クロージャや継続といった高度なオブジェクトを実装したほか、多重代入や引数の展開、キーワード引数や演算子の再定義など、様々な機能が利用できる拡張性の高さを誇る。
 この作品もU-20プロコン個人部門で経済産業大臣賞を受賞。

 作者の林拓人さんは開成高等学校の2年生。U-20の存在は中学生の頃から知っていたという林さんだが、プログラミング歴はわずか1年とか。しかも、ほとんど独学で作り上げたのだから恐れ入る。審査員からは「プログラミング言語に対する深い考察と技術力、作成者本人の大きな将来性を感じさせる」と好評。自らの作品に対する悲喜こもごものプレゼンも、会場を大いに沸かせた。
分割した画像を高速表示
国立一関工業高等専門学校
奥田遼介さん

 動画をサーバーからLAN経由でクライアントに転送し、大量のクライアントマシン=ディスプレイを使って、分割した画像を高速に表示するソフトが「分割再生」だ。イベント会場でのデモ等に絶大な効果を発揮する。
 作者は一関高専4年生の奥田遼介さんで、この作品もU-20プロコンの個人部門で経済産業大臣賞を受賞した。

 マルチスレッドや画像圧縮などの工夫によって、PCとLAN環境だけで動作し、クライアント数の制限がないことから、高価なグラフィックボードやマルチモニターコントローラーが不要になるため、廉価でデモ環境を構成できるのが最大のメリット。一つの画面を分割して複数のパソコンで表示するという発想を、基本的な原理でアプローチしている点や、「現時点での実用性が十分である」ことも高く評価された。
ゲームでアルゴリズムを学ぶ
沼津情報専門学校
「Team.NIBOSHI」

 初心者でもアルゴリズムを分かりやすく勉強できるように、画面上で組み立てたアルゴリズムをゲームキャラクターで表現し、実際にビジュアルで確認しながら学習できるように考案された「Dodge Logic」。
 作者は沼津情報専門学校2年生の落合亜佐美さんと新川剛さんで、この作品はU-20プロコン団体部門で経済産業大臣賞に輝いた。
 開発チームはスズキ教育ソフト「ロボチャート」にヒントを得て、キャラクターに命令を与えて動かし、他人の作ったキャラクターと対戦させて、どちらがよりよいアルゴリズムかを競うソフトを作り上げた。

 審査員からは、「アルゴリズムの優劣をゲームの勝敗に置換した発想は素晴しい。フローチャートを楽しく学習するという訴求点が実現され、アイデアと技術のバランスがとれた秀作」と評価された。
高校プロコンで連覇を達成
富山県立富山工業高等学校
「全国高校生プログラミングコンテスト」参加チーム

 第29回全国高校生プログラミングコンテストで、昨年に引き続き連覇を達成したのが富山県立富山工業高等学校。
 高校プロコンは、トーナメント方式の直接対決でプログラミングの力量を競い合うゲーム「CHaser2008」で行われた。
 このゲームは、平面に描かれたマスの上に陣取って、相手をブロックで囲むか、フィールド上のオブジェを数多くゲットした方が勝ちとなる2次元ゲーム。富山工高はフィールド片隅を動きながら相手位置とオブジェを探査し、オブジェの過半数を取ったところで、自動的に自陣をブロックで防御するプログラムを組んで戦った。

 フィールドのコーナーに自陣を構え、攻撃と防御の切り替えを巧みに行うプログラムは、審査員から「将棋の穴熊のような優れた戦法」と評価され、相手チームを次々に撃破した。


各コンテストの詳細はこちら

全国高等専門学校プログラミングコンテスト
http://www.procon.gr.jp/


全国高等専門学校プログラミングコンテスト
http://www.procon.gr.jp/
U-20プログラミング・コンテスト
(受賞者コメント)
http://www.jipdec.or.jp/procon/work/index.html
(審査講評)
http://www.meti.go.jp/press/20080917001/20080917001.html


全国高校生プログラミングコンテスト
http://www.zenjouken.com/contest/index.html


高校生ものづくりコンテスト
http://www.zenkoukyo.or.jp/
ものづくりコンテストで優勝
鹿児島県立鹿児島工業高等学校
山下偉愛さん

 全国工業高等学校長協会主催の第8回高校生ものづくりコンテスト全国大会・電子回路組立部門で、初出場初優勝を果たしたのが、鹿児島県立鹿児島工業高等学校3年生の山下偉愛(たけのり)さん。この部門はハードウェアの組立技術、回路設計、ソフトウェア組込技術を総合的に競うもので、今回は光センサを回路に組み込み、そのセンサの前に物体を置いてセンサ出力を分解能8ビットでAD変換し、その出力をLEDで表示させるという課題だった。

 SOP-ICやチップ抵抗、チップコンデンサなど、微細な部品のハンダ付けや、技能士検定試験2級クラスのプログラミングの模擬問題を数多くこなして臨んだという大会で、並み居る強豪を抑えて鹿児島県勢としても同校としても初優勝。母校の創立100周年に花を添えた。卒業後は大学に進学し情報技術を学ぶ予定だ。

 

ITジュニア育成交流協会

「高山理事長賞」の部
プログラミング技術の
学習ツールとしての効果

(全国高校生プログラミングコンテスト実行委員会)


 全国情報技術教育研究会主催の「全国高校生プログラミングコンテスト」は、「創造力を発揮した新鮮な発想でのプログラム作成を通じた、ものづくりへの興味の向上、次代を担うスペシャリストの育成」を主眼に行われている。29回目を数える今大会では、『CHaser2008』というゲーム競技を設定、生徒が作成したプログラム同士を対戦させることで勝敗が競われた。

 選択する行動の組み合わせにより、エキサイティングな試合となるこの『CHaser2008』は、挑戦する生徒が楽しみながらプログラミング技術・ネットワーク技術を学ぶことができるe-ラーニングツールとしての可能性をも示している。今回、この競技の教育効果を称え、ITジュニア育成交流協会より高山理事長賞が贈られる。