低迷する組み込みソフト市場を回復させる切り札になるのか──。富士ソフト(白石晴久社長)は、持ち前の組み込みソフト技術を生かし、大手SIerとして初めて人型ロボットを開発。まずは教育機関向けに2010年3月15日から販売を始める。1年半余りの開発期間を投じて、人の顔を認識する機能や、音声解釈、障害検出、転倒時の受け身などさまざまな“知能化技術”を詰め込んだ。大学や研究機関で考案された理論をベースに、富士ソフトがプログラミング。ハードウェアはグループ会社のオーエー研究所(矢田善春社長)で製作し、人型ロボットを動かすまで完成度を高めた。

 教育機関向けの販売価格は29万8000円(税込み)だが、真の狙いは、組み込みソフト事業の業績回復にある。携帯電話向けソフト開発需要が減退し、期待されているエコカーも本格的な拡大までにはまだ時間がかかる。そこで目をつけたのが“知能化技術”だ。同技術は、人の顔や音声を認識し、適切な対応を自動的に行うプログラムで、知能化エンジンとも呼ばれる。今回は人型ロボット「PALRO(パルロ)」という形で実体化したが、今後は知能化エンジンをパッケージ化した独自のソフトプロダクトの製品化も視野に入れる。

 例えば、通り過ぎる人の性別や年齢を認識し、最適な広告を表示するデジタルサイネージ(電子看板)への知能化エンジンの組み込み。あるいは、受付の案内や介護・福祉現場での簡単な作業など応用の余地は大きい。また、富士ソフトでは、APIを公開するなどして、同社の知能化技術を活用したアプリケーション開発を容易に行えるようにする。

 すでに、大手電機メーカーや自動車メーカーなども人型ロボットの開発に取り組んでいるが、「ソフトをオープンにしたり、組み込みソフトを単体で販売したり、SIを行ったりするのは、SIerである富士ソフトならではの得意領域」(白石社長)と、自らの強みを生かした展開を行うことで国内外でのビジネスを伸ばす計画を示す。(安藤章司)

白石晴久社長と人型ロボット「PALRO」