IIJ Global Solutions Singapore
マネージング・ダイレクター
大野 修氏


 AECの発足をきっかけに、シンガポール政府は世界の情報を集める「データハブ」としての位置づけを固めようとしている。シンガポールでは、法人税が低いなどのメリットがあることから、世界の企業はアジア地域のヘッドクオータ(HQ)機能をシンガポールに集約する動きに出ている。それを追い風に、クラウドをはじめとするITに関してのニーズが旺盛になりつつある。クラウドサービスを提供するインターネットイニシアティブ(IIJ)グループのシンガポール現地法人の経営トップを務める大野修氏にたずねた。

マネージング・ダイレクターの大野修氏。シンガポール在住歴は20年以上。2013年1月に現職に就く前は、トヨタ自動車グループ向けにICT(情報通信技術)構築を手がけるTT Network Integration Asiaの幹部を務めた。1961年、東京都生まれ。
──1993年からシンガポールに在住しておられる方の目で見て、街はどう変わってきたか。

大野 シンガポールはこの20年の間、ずっと「バブル」が続いている。街は常に建設ラッシュに沸いていて、物価も急速に上がってきた。今や、シンガポールの物価は世界No.1だろう。政府は成長戦略として、新しい取り組みに積極的な姿勢を示し、直近では、観光の強化や「データハブ」の構築に力を入れている。

 今年末を予定しているAECの発足を受け、日系を含めた企業はシンガポールをアジア地域HQとして、ここからASEAN各国の市場に入るという動きを加速しているところだ。そのため、基盤を柔軟に拡張できるクラウドの需要が高まっている。

──IIJグループのビジネス状況は。

大野 現在、営業やサポートなど、19人のスタッフを抱え、そのうち、現地採用は私を入れて17人。もちろん、ビジネス領域はシンガポールに限らず、マレーシアやインドネシアなどASEAN全体だ。ASEANでは、NTTコミュニケーションズなどの通信キャリア系や富士通といったメーカーが事業を展開しているが、当社はクラウドやネットワーク構築などの広いポートフォリオをもち、商材に関しては競合に負けないと自負している。

 当社の弱点は、拠点が少ないこと。私が決めることではないが、今後は拠点づくりも欠かせないと捉えている。現在は、アジアのHQ機能をシンガポールに集約して、そのためにクラウド基盤を採用するというニーズが高いので、当面は「シンガポール集約型」の案件でビジネスを伸ばしたいと考えている。今年の目標は、データセンター(DC)のラックスペースをとにかく売り切ることだ。

──ASEANで事業を展開する際の落とし穴は何か。ASEANビジネスの“大先輩”として聞かせていただきたい。

大野 価格とスピードが命。「明日からシステムを使いたい」と言われることさえある。一方、「品質」に関しては、目に見えるものではないので、訴えてもなかなか通じない。ASEANでカギを握るのは、人間関係。直接、ビジネスの話に入って商談を進めるというよりも、まずは一緒に食事に行って、食べたり飲んだりしたほうが、信頼関係をつくりやすい。私の経験値です(笑)。(ゼンフ ミシャ)