日本では、マイナンバー制度に伴うシステム開発や複数の大手金融機関のシステム統合、東京五輪に向けたインフラ整備など大型プロジェクトが始動し、IT人材の不足が続く。2008年後半のリーマン・ショック後の景気低迷は、IT人材のニーズを急激に減少させたが、ここにきて、IT人材不足問題が再浮上したかたちだ。

 こうした現状打破の方法として、オフショア・ニアショア開発が挙げられる。中国は、日本のオフショア開発の最大の相手国だが、人件費高騰や為替レートの変動によって、ITアウトソーシング(ITO)先としての見方が変わってきた。近年、ASEAN諸国に委託先を移す日本企業が増えつつある。

 そんななか、とくに注目が集まるインド、フィリピン、中国について、中国工業和信息部(工信部)やフィリピンソフトウェア産業協会(PSIA)、インドソフトウエーア・ サービス協会(NASSCOM)など、関連産業機構のデータをもとに、レポートする。

 15年(1~12月)の中国情報サービス業の売上高は、前年同期比16.6%増の4兆3249億元。15年通期のソフトウェア輸出額は、前年比5.3%増の545億ドル。アウトソーシングの輸出の増加はない。中国商務部によると、日本からのアウトソーシングプロジェクト契約執行金額は、9.8%マイナス成長の54億8000万ドルで、今後も低下が続くと予測。

 一方、15年(3月期)のインドIT-BPM(IT Business Process Management)産業の売上高は、前年比13%増の1460億ドルで、67%が輸出額だ。グローバルサービス市場でインドが占める割合は55%で、増加の勢いは止まらない。IT-BPMは、経済成長をけん引する重要な産業として、近年グローバル市場でのノウハウを売りに、積極的に日本IT業界にインドIT企業との協業を呼びかけている。

 また、存在感を高めてきたフィリピンのIT-BPM産業は、14年の売上高が189億ドル、平均成長率は23.5%、グローバルサービス市場で占める割合は11.5%で、わずか5年間で72%増を果たした。高技能人材が不足している中国に比べ、インドとフィリピンは英語が堪能で、高学歴な若年生産労働力が豊富。コスト優位性は、インド、フィリピンと中国という (Everest Group、2014年調べ)順になる。

 Tholon's2016世界のアウトソーシング拠点上位10都市には、インドの6都市、フィリピンの2都市がランクインした。両国のIT-BPM産業は経済成長への貢献度が非常に高く、重要な産業としてさまざまな税制上や金融緩和、教育支援など、優遇策の施行を進めており、投資はさらに増加するとみられる。

 日本の企業はこれら三国に対して、ITサービスのマーケットとして捉えるのか、サービスアウトソーシングの受け皿あるいは、グローバルサービスデリバリ拠点として、将来を見据えて先行投資を行うかの戦略策定に迫られている。有効な海外ITサービス市場の活用は、日本企業が抱える既存の課題を解決し、生産性の向上・コスト最適化のカギとなりそうだ。