【上海発】日系ITベンダーが、中国で続々とIoT(Internet of Things)ビジネスに参入し始めた。日立製作所や東芝などの大手は、以前から中国グループ会社を中心にIoTビジネスを推進してきたが、この1年ほどで、多くの日系ベンダーが外部企業に対しての提案を開始。苦戦を強いられている中国市場で巻き返しを図ろうとしている。(真鍋 武)

 セゾン情報システムズ中国法人は、今夏に新商材「HULFT IoT」の販売を開始する。NTTドコモ中国法人では、昨年、Wi-Fiレンタルなどの既存ビジネスを縮小し、IoT/M2M環境構築に必要な製品・サービスを提供する「M2Mトータルサービス」を戦略商材に置いた。ムロオシステムズでは、中国の関連会社を通して現地の製造業と技術提携を結び、IoT機器のモジュールやアプリ開発を支援するビジネスを推進。このほか、日本ビジネスシステムズ、IIJグローバルソリューションズ、東洋ビジネスエンジニアリングなどの中国法人も、IoTを切り口とした提案を始めている。

 日本本社が注力分野に位置づけていることは理由の一つだが、各社が中国でIoTビジネスを展開するのには別の要因もある。まず、中国はIoT市場の潜在力が大きい。調査会社IDCでは、2020年にAPAC地域のIoT市場の59%を中国が占めると予測。中国政府が掲げる「中国製造2025」政策では、次世代情報技術が重要項目に置かれており、ムロオシステムズの潘忠信社長は、「製造業のスマート化とはIoTに他ならず、チャンスは大きい」と話す。

 また、日本と比べ中国のIoT市場が早期に立ち上がることが予測される。新日鉄住金ソリューションズ中国法人の五味隆総経理は、「日本では、セキュリティ面を考慮して案件が思うように進まないことが多いが、中国では、早期に低コストでライトなIoT商材を開発したいという需要が期待できる」とみる。IDCの調査によると、中国のユーザー企業のIoT認知度は、海外全体のそれを9.7ポイント上回る98.8%。セゾン情報システムズ中国法人の張圃総経理は、「16~17年は大きなチャンス。ここで攻めなければ、競合に市場を先取りされる」との見解を示す。

 一方で、日系ベンダーがこぞってIoTビジネスを手がけ始めた現状に対して懐疑的な見方もある。ある総経理は、「自社で戦略的な商材をもっておらず、ユーザーを引き付けるためのキーワードとしてIoTを提案しているだけの企業もある。機器にセンサを搭載してデータを収集する単純な仕組みなら、どのIT企業でも手がけられる。IoTの真髄は、集めたデータをどう活用するかであり、このノウハウまでを含めた提案ができるIT企業はまだ多くない」という。こうしたノウハウをもつITベンダーかどうかを精査するために、ユーザー企業の問い合わせが現在は一時的に増えているだけの可能性もある。実際に日系ITベンダーがIoTビジネスで実を結ぶためには、他社にない独自の強みが求められそうだ。