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リコー VCをワンストップ提供 働き方改革でUCSやIWBを提案

2017/02/01 09:00

週刊BCN 2017年01月23日vol.1662掲載

 リコー(三浦善司社長執行役員)は、従来のデジタル複合機(MFP)を中心とする画像機器やITサービスだけでなく、プロジェクターやビデオ会議システムなどのビジュアルコミュニケーション(VC)を、次の成長分野として強化している。同分野はここ数年急速に成長している。国内では「働き方」改革の意識が高まり、顧客のVC需要が増えている。同社では、単に機器を揃えるだけではなく、顧客の利用スタイルに応じてクラウドサービスなどを組み合わせて提案することで、さらなる拡大を目指す。今夏頃には、米IBMのコグニティブ技術を活用したコンピュータ「IBM Watson IoT」と連携した電子黒板を発売する計画で、同社の技術との融合で働き方の多様化に応じた独自のソリューションを展開する。

社内外のコラボを効率化

野中秀嗣
常務執行役員
ビジネスソリューションズ事業本部副事業本部長
 リコーがVC分野で展開する製品は、特徴的な超短焦点を含めたプロジェクター(PJS)、ビデオ会議システム(UCS)、電子黒板のインタラクティブホワイトボード(IWB)などの自社機器に加え、デジタルサイネージにコンテンツを配信するシステムをクラウドで提供するサービスなどだ。ここ数年でVCをワンストップで提供できるまでに製品を揃え、要望に応じたソリューションを提供できるようにするため、研究・開発・販売体制を整備してきた。

 VC分野の事業責任者でビジネスソリューションズ事業本部副事業本部長の野中秀嗣常務執行役員は、「情報の閲覧や伝達手段が大きく変化している。PJSやUCS、IWBの各事業軸でみると、エプソンやシャープなどのメジャープレイヤーがいて、市場自体も飽和状態にある。しかし、リコーの視点でみると、顧客のニーズは多様化しており、それに対し、従来の商品群では顧客の要望に応えられなくなっている」と話す。働き方を変えて生産性を上げるだけでなく、新しい働き方を提案してほしいという企業が増えているという。このため、自社で機器を開発し他社製品やサービスと連携した新しいコミュニケーション環境を提案し事業を拡大している。

 PJSは、ハンディタイプから大ホール向けまでの製品を揃え、IWBも55~84インチまであり、会議室などの規模に応じて選択できる。UCSでは、マイクロソフトの「Skype for Business」や他社のテレビ会議システムなどの製品と接続機能を強化し、独自に利便性を高める機能を搭載。

  これに加え同社の研究機関で開発したテレビ会議やサイネージの技術と連携して使う遠隔多言語通訳や「バーチャルレセプション」と呼ぶ、受付をセンター側で遠隔操作できるソリューションなどがある。「自社製品だけで完結するのではなく、すでに顧客で導入した他社製品との連携ニーズも高いため、それらを見越した業種業務に応じたサービスを展開中だ」(野中常務執行役員)という。

 同社のリサーチによれば、CIO(最高情報責任者)の7割以上が、ビジネス変革のため従業員や社外とのコミュニケーションの生産性向上を重要視している。また、同じく8割弱のビジネスリーダーが会議を減らしたいと考えているという。

 野中常務執行役員は、「スマートデバイスやクラウドサービスなどが使われるようになり、コミュニケーションが便利になる一方、会議の数が増えたり、生産性の高いコラボレーションができていないという悩みがある」と、VC機器を導入したものの、生産性を上げたり、従業員のコラボレーションを深めるための用途として上手く利活用されていない課題があるという。

 例えば、Skype for Businessを使うユーザーは増えた。だが、多人数で会議する際の課題もある。同社では、ビデオ会議機能と画面共有機能をIWB上で使える連携製品を提供中だ。

 また、IWBを使って会議する際に黒板上に書いた文字やメール配信時のセキュリティを確保するため、MFPで搭載するICカード認証をIWBに組み込む準備をしている。Skypeを使ったIWBは、欧米の医療、製造、教育分野で導入が進み、世界の拠点で使う例も増えている。UCSを使った例としては、受付人員や業務のコスト削減をねらったバーチャルレセプションという遠隔受付システムの導入が多くなっているという。
 

Watsonと電子黒板を連携

 野中常務執行役員は、「働き方を変えたいという思惑やVCの使い方は、日本独自の事情ではなく世界でも地域によって異なる。そのため、国内を含め世界6拠点に『テクノロジーセンター』を設け、顧客接点でニーズを拾い上げ、企画・開発している」と話す。VCは、新しい分野であり、従来の機器と異なり、組み合わせ次第で多様に使える。あらゆるニーズに対し、柔軟に対応できる企画・開発・販売体制を敷く必要性があったわけだ。

 今夏頃には、「IBM Watson IoT」で実現するIWBを発売する計画だ。IWBに映した映像や資料、会議中に議論した内容の書き込みなどをWatsonが把握し、会議の効率化や決めるべき項目、アイデアの集約などに役立てる。「会議中の音声を認識し会議録をテキストに起こしたり、多言語に訳すことができる。ミーティングをアシストするうえで、Watsonを活用する」(野中常務執行役員)と、会議の事前準備や会議後の作業を軽減するだけでなく、会議の内容を学習することで、新たなアイデアを生み出すシステムに進化させる。

 コピーやプリンタなど、従来の同社の主力事業は、情報のデジタル化の進展の影響で縮小傾向にある。一方、情報の閲覧・伝達方法が多様化したことで、働き方を見直す企業側の意向が高まっている。その手段として、どの企業でも使えるような定型的な方法はまだ定まっていない。

 同社は、画像機器分野を補う事業として、VC分野にチャンスを見出し、ここにきて方向性が定まったといえる。VC分野を伸ばすため、今後は事務機ディーラーなど既存の販売パートナーがもつ製品・サービスとも連携し、事業の拡大を目指す。(谷畑良胤)
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外部リンク

リコージャパン=https://www.ricoh.co.jp