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リコー 自己否定から始まる再起動山下新社長の舵取りとは? 構造改革を17年度中にやりきる

2017/05/10 09:00

週刊BCN 2017年04月24日vol.1675掲載

 4月1日付でリコーの社長に就任した山下良則氏。山下新社長が陣頭指揮を執る2019年度を最終年度とする第19次中期経営計画が明らかになった。

「RICOH再起動」に
ついて説明する
山下新社長

 リコーは4月11日に4度目となる17年3月期業績予想の下方修正を発表しており、営業利益が従来予想の400億円から300億円へ、最終利益が100億円から20億円へ下振れする見通しだ。主軸であるA3複合機」の市場鈍化が進んだこと、A4複合機が拡大したものの、サービス事業の利益率や金額が減少。市場規模拡大を前提とした戦略が成り立たなくなったことが要因だ。この下降線から脱却するため、「RICOH再起動」を宣言。山下社長は「自己否定から始める」と厳しい言葉を使った。背景には、従来通りの改善努力を続けただけでは、19年度には500億円規模の赤字になるという収益シミュレーションが出たという事情がある。

 具体的には、これまでのリコーの成長を支えてきたマーケットシェア追求、MIF拡大、フルラインアップ、直売・直サービス、ものづくりの自前主義という5大原則を「成長を阻害する遺産や前例は、聖域を設けず見直す」(山下社長)という。

 再起動の基本プランは、トップダウンでやり抜く「構造改革」、事業を絞り込み、他社が嫌がるような勝てる戦略展開を徹底する「強みを軸とした成長事業の重点化」、ステークホルダーの信頼を再構築するための「結果を出す実行力と責任」の三本柱だ。なかでも早急に出血を止めるため、構造改革を前倒しで進め、「17年度でやりきるつもりで取り組む」と山下社長は述べた。

 構造改革の主な施策として、コスト業務改革、業務プロセス改革、事業の選別の徹底に取り組む。とくにコスト業務改革では、埼玉県八潮市にある事務機器や周辺機器の生産・設計拠点を来年3月に閉鎖するなど、生産拠点の統廃合を進める。米国地域においては「直近の課題」と位置づけ、現在、8割を占めている直販体制を見直し、ディーラーとの協業強化、インサイドセールスを利用した営業生産性の向上、バックオフィス人材の削減に取り組む。業務プロセス改革では、新製品の複合機に自動的にシステム更新ができる機能を搭載するなどして、サービスエンジニアが顧客を訪問する手間を省き、生産性を改善する。事業の選別の徹底では、事業/サービスの撤退・維持・投資基準を明確化する。具体的には、カメラ事業においては好調の360度カメラ「THETA」を軸にサービスを追加することで、事業の立て直しを図る。個人向けカメラは機種の品揃えは一部縮小する、とした。

 こうした構造改革で累計1000億円以上の財務効果を出し、19年度の営業利益で1000億円以上、3年間のフリーキャッシュフロー(ファイナンス事業を除く)で1000億円以上を目指す。厳しい状況下から始まるリコーの新体制。山下社長の手腕が問われる。(山下彰子)
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外部リンク

リコージャパン=https://www.ricoh.co.jp