ハードウェアスタートアップが急増 トータルサービスで支えるseeed

【深セン発】イノベーションを原動力とした経済発展を重要視している中国では、「大衆創業・万衆創新(双創)」政策として、起業家の育成に力を注いでいる。広東省の深セン市は、製造受託企業が豊富な特性から、ハードウェアスタートアップが急増。「中国のシリコンバレー」として、国内外から注目が高まっている。同時に、こうしたスタートアップの支援ビジネスも一大産業と化している。(上海支局 真鍋 武)

 深セン市南山区の「深セン湾創業広場」。同市政府主導のもと、2015年6月に運営を開始したこの産業開発エリアには、スタートアップやメイカーをサポートする組織や企業が集積している。インターネット大手のテンセントが運営する「騰訊衆創空間」やEC大手の京東集団が手がける「京東智能」、さらに「聯想之星」「創新工場」「中美創投」「“北斗+”衆創空間」など、約50ものインキュベータ/アクセラレータやメイカーズスペース(衆創空間)が存在。また、金融機関も25社ほど進出しており、起業家をサポートするためのエコシステムが構築されている。
 
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深セン湾創業広場の近辺では、テンセントの新本社など、超高層ビルの建設が進む

 エリア内には、若者の姿が目立ち、活気づいている。起業家が交流したり、説明会を行ったりできる「創業カフェ」も多く店舗を構え、店内では熱心に議論する場面も。深セン湾創業広場の近辺には、テンセントの新本社ビルなど、超高層ビルの建設が続いている。

 深セン市政府は15年、「深セン市促進創客発展三年行動計画(2015-2017)」を発表。政府主導で、市内に毎年50か所の衆創空間を設け、17年末までに200か所にする目標を掲げた。今や、市内のいたるところで、こうした施設の看板が見受けられるようになった。

 数あるスタートアップ支援企業のなかでも、深セン硅遞科技(潘昊CEO、seeed studio)は、その先駆けとして有数の知名度を誇る。08年に設立した同社は、もともとプリント基板(PCB)の製造受託を手がけていたが、現在では、ハードウェアの設計から製造、販売などの幅広いサービスを提供。李克強首相が同社のメイカーズスペース「柴火創客空間」を視察訪問するなど、中国政府からの注目も高い。
 
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深セン硅遞科技 蘇祐立
国際商務拓展副総

 蘇祐立・国際商務拓展副総は、「ハードウェアメイカーに必要なサービスをトータルで提供できることが当社の最大の強み。アイデアさえあれば、誰でもIoT機器などを商品化することができる」と説明する。seeedでは、大きく分けて「Prototype」「Produce」「Promote」の3つの観点から、ハードウェアメイカーを支援している。

 「Prototype」では、自社開発のプラットフォームやオープンソースハードウェアモジュールを用いて、製品開発のためのキットを提供し、プロトタイプ作成を支援。一般的に、起業家がアイデアを商品化する際には、OEM/ODMメーカーに委託することが多いが、大手の場合、生産量や将来性などの観点で、対応してくれないケースもある。seeedのサービスは、こうした障壁を取り払うものだ。「Produce」では、製品生産サービスを提供。seeedは自社の製造拠点「敏捷製造中心」を有しており、メイカーはインターネットを通じて簡単に発注することができる。「Promote」では、販売支援のサービスを提供する。seeedはグローバルに販売代理店を約700社有し、オンライン上では約1000、実店舗では約1万のチャネルを抱えるほか、自社のECサイト「Bazaar」を運営している。加えて、同社はインキュベータ/アクセラレータ事業も展開している。

 seeedでは、年間200~300社のハードウェアメイカーを支援しているという。ドローン世界大手の大疆創新科技(DJI)や教育用ロボットのMakeBlockは、過去に同社が支援し、その後大きく成長した企業の代表例だ。また、外資企業との取引も盛んで、売上高の90%は海外からの案件で捻出している。

 蘇・副総は、「IoTや教育関連のハードウェアメイカーの支援に力を注いでいきたい」と今後の方針を語る。スタートアップ支援のエコシステム構築が進む深セン。ファーウェイやZTEのようなグローバル企業に成長するスタートアップが生まれる日は、そう遠くないかもしれない。