3年で新デバイス事業を軌道に

 東芝クライアントソリューション(覚道清文社長)は9月下旬、 IoT(Internet of Things)機器とクラウドコンピューティングの“つなぎ役”を果たす「Windows 10」搭載の小型エッジデバイス「DE100」を発売した。12月には、メンテナンス作業などで使うカメラやマイクなどを装備したメガネ型のウェアラブルデバイスも販売する。同社はこれまで、パソコンを主軸にした基幹システムなど、法人向けの販売・卸を主力にしてきた。だが、今後この領域は、大幅な需要拡大が期待できないことから、新デバイスを使ったソリューション販売で新たな市場を開拓する。同デバイス事業を3年で軌道に乗せる考えだ。(取材・文/谷畑良胤)

201710121859_1.jpg
「DE100」の企画・開発に携わった(左から)
クライアントソリューション事業部モバイルエッジコンピューティング推進部の熊谷明副部長、
経営企画部の弓削慎太郎部長、技術・品質・事業開発所管の柏木和彦取締役執行役員、
モバイルエッジコンピューティング推進部長でもある鏑木一誠執行役員

本命市場は、オフィス内ではない

 東芝クライアントソリューションが開発した高性能小型デバイスDE100は、ノートPC事業で培った高密度実装技術やBIOS技術などを駆使し、アップルのスマートフォン「iPhone Plus」ほどのコンパクトサイズ(幅約85mm×奥行165mm×高さ20mm、本体重量約310g)を実現している。パソコンのような液晶デバイスは非搭載。ただ、CPUに第6世代インテルCoreプロセッサ、OSにWindows 10 Proを採用し、無線LANやUSB Type-cコネクタ、指紋センサを標準搭載し、バッテリの駆動時間も5.5時間と長いなど、処理能力や性能、拡張性はパソコンと同等だ。
 
201710121859_2.jpg
エッジコンピューティングを加速するために開発した高性能小型デバイス「DE100」

 Windows 10 Proを搭載しているため、液晶ディスプレイの後方にDE100を装着すれば、タワー型の一般的なデスクトップPCに比べ、省スペース化することが可能。Windows 10の組込機器向けOS「Windows 10 IoT」を使えば、セキュアな端末化や2台構成でインターネット分離環境が容易に構築できる。DE100とIntel Uniteソリューションを活用すれば、多画面表示で多拠点で共有できるテレビ会議システムも簡単に構築できる。

 ただ、同社の“本命”は、従来主力としてきたパソコン事業の延長線上ではなく、IoT関連やノートPCが行き届かない現場など、新たな市場だと思われる。モバイルエッジコンピューティング推進部長でもある鏑木一誠執行役員は、「IoT機器とクラウドの間に位置し、サーバー側で実施していた機能の一部を担う『エッジコンピューティング』の市場は、これから拡大していく。ノートPCや他のデバイスが行き届かない場所の制約から解放し、働き方改革の一環で時間短縮に貢献したい」と、DE100を開発したねらいを語る。

 センサデバイスなどIoT機器の近くにDE100を配置し、サーバーの役割を担わせれば、クラウドとの距離を短縮することができ、ネットワークの負荷を低減してリアルタイムな保存・処理・分析が可能になる。DE100を利用したシーンとして、同社はこんなユースケースを示している。12月に発売するメガネ型のウェアラブルデバイスと接続して実現する機器メンテナンス業向けの例だ。

 同デバイスは、ディスプレイやカメラ、マイク、スピーカーなどを装備。電子化したマニュアルを映像に映った対象物に重ねて表示し、取り掛かっている作業に応じ注釈を手順ごとに表示する。不慣れな作業者には、遠隔から専門スタッフがアドバイスできる。また、物流センターの倉庫でのピッキング作業も、同デバイスからのナビゲーションで正しいアイテムを早期に発見し取り出せる。

SDK搭載、SIerの開発に期待

 技術・品質・事業開発所管の柏木和彦取締役執行役員は、「メンテナンス業や倉庫業などのオフィス外での作業員が不足している。専門スタッフを養成するにも時間がかかるなど、人にかかわる課題が多い。DE100は当社にとって新しい商品ジャンルになる。DE100を活用しノートPCでリーチできない層へ市場を拡大する」と語る。このほかにも、設備工事や医療現場、災害復旧時のドローン映像解析などの用途への普及をねらうという。

 DE100には、開発ツール(SDK)が搭載されている。「システムインテグレータ(SIer)などシステム開発会社は、このSDKを使ったアプリケーション開発などができる」と、クライアントソリューション事業部モバイルエッジコンピューティング推進部の熊谷明副部長は、他社とのアライアンスを強化していると語り、IoT関連で活発な展開をみせるITベンダーに期待する。

 DE100は、日本と米国で同時発売した。今後は、欧州やアジア圏にも拡大する。経営企画部の弓削慎太郎部長は、「ユースケースが増えるほど、横展開が多くなる。業界や業務に特化した汎用ソリューションをパッケージ化したい」と、世界の事例を含めDE100の拡販をねらう。DE100の販売方法としては、買取型だけでなく、サブスクリプション型での月額課金モデルも検討中だ。

 オフィス・OA機器の販売・卸が主軸だった同社の事業は、DE100の登場で、IoTなどの新領域に進出することができるのか。同社は、DE100などの端末を「Mobile EdgeComputing Device(MECD)」と呼んでいるが、同関連事業を「3年で軌道に乗せる」(弓削部長)としている。だが、他社でも同様に小型サーバーのようなエッジデバイスが増えているため、競合が激しくなっている。同社が、ノートPC事業で鍛え上げた商品の性能や耐久性などの品質力は、他社に勝る。新領域の商品群が、どこまでIoT市場に浸透できるか期待したい。