【ラスベガス発】米CAテクノロジーズ(マイク・グレゴアCEO)は11月15日、16日、年次イベント「CA World '17」を米ラスベガスで開催した。昨年のCA Worldで披露した「モダン・ソフトウェア・ファクトリ」が話題の中心となり、機械学習や人工知能(AI)についての考えを示した。なぜ「モダン・ソフトウェア・ファクトリ」が必要なのか。同社が示した戦略を紹介する。

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キーワードは「pivot」

 初日のキーノートで登壇したグレゴアCEO(最高経営責任者)は、キーワードの一つとして、日本語で「転換点」を意味する「pivot」を挙げた。

 グレゴアCEOがこの言葉を使った背景には、ソフトウェア開発の流れを高速化し、ユーザーのニーズに柔軟に応えていくことを目的とするモダン・ソフトウェア・ファクトリが、この1年で着実に進展したことをアピールする狙いがあったとみられる。
 
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製品の展示会場

 それを示すように、今回のCA Worldでは、モダン・ソフトウェア・ファクトリを採用したことが転換点になり、成長をつかんだ顧客企業の事例を数多く披露した。

 そのなかで、グレゴアCEOが最初に提示したのは、米金融大手シティグループのデジタル部門「シティフィンテック」の事例だ。
 
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マイク・グレゴア
CEO

 シティフィンテックは、CA Agile Requirements Designerを利用し、開発のスピードを上げながら顧客にモバイル体験を提供している。リスクを管理しながらすばやく対応することで、「社員が挑戦を恐れないようにしている」(グレゴアCEO)のが特徴だ。

 シティフィンテックのCEOは、キーノートにビデオメッセージで、「通常のウォーターフォール型の開発では3年から5年はかかる開発のサイクルタイムを8か月に短縮した」と説明した。

 さらに、「変化に対する顧客の意欲は非常に高まり、常にベストの体験を求めている。このスピードについていけなければ置いてけぼりだ」と述べ、迅速な開発の重要性を訴えた。

 グレゴアCEOは、その後も事例を続けて説明した。企業だけにとどまらず、政府機関でもモダン・ソフトウェア・ファクトリが取り入れられていることを示し、「ソフトウェアはクリエイティブの代替で、世界を変えていける」と強調。「モダン・ソフトウェア・ファクトリをつくることは、競争力を保つための前提事項になっている」とも言及した。

 キーノートの最後には、「一瞬の成功に満足せず、常により大きなビジョンにしっかりとしがみついていないといけない。私たちは、みなさんに(成功への)道をみつけられるソリューションを提供している。これからも、みなさんのモダン・ソフトウェア・ファクトリをつくるお手伝いをしていく」と意気込みを語った。

 キーノート後には、世界的な登山家で写真家のジミー・チン氏とグレゴアCEOの対談が開催され、登山における意思決定やリスク管理の重要性のほか、パートナーとの関係などについて議論を交わした。
 
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グレゴアCEO(左)とジミー・チン氏の対談

 過去のCA Worldでも、ゲストを招いたことがあった。今回、同氏をゲストに迎えた理由は何か。対談には大きなメッセージが込められていたとの見方がある。

 CAテクノロジーズの関係者は、「登山は一つの選択が生死を左右する。これは企業でも同じで、変化や競争が激しい現在は、状況に応じて何を選択するかが非常に重要になっている」と解説した。

「2030年までにITがなくなる」

 CAテクノロジーズがモダン・ソフトウェア・ファクトリの普及に力を入れている理由は、IT業界の変化が急激に進み、業界の構造が大きく変わりかねないとの考えがあるからだ。
 
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オットー・バークス
CTO

 2日目のキーノートでオットー・バークスCTO(最高技術責任者)は、「2030年までに、現在のITと呼ばれているものはなくなる」と予想した。そのうえで、変化に対応するには、モダン・ソフトウェア・ファクトリの必要性を説き、「古くて気の抜けたロードマップはもう終わり。モダン・ソフトウェア・ファクトリこそが技術のロードマップだ」と訴えた。

 将来の見通しについては、「アジャイルの動きは、これからも拡張していく」とし、データとアナリティクスが革新のカギを握っていると主張。「データ分析をかけないアジャイルは、酸素なしで燃料を注入しているのと同じだ」と例えた。

 また、「機械学習がソフト開発をより高いレベルに引き上げる」と持論を展開。AIの製品への活用についても触れ、「これまでのデジタル化によって得られた効率化は、機械学習やAIで収穫の時期を迎える」と語った。

 最後には「われわれは、大きな変化に備えないといけない」とし、「技術を単なるツールからパートナーに引き上げることが重要だ」と締めくくった。
 
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アイマン・サイード
CPO

 一方、アイマン・サイードCPO(最高製品責任者)は、買収などを通じて充実させてきた製品群を紹介し、「最も重要なのは使い勝手で、ツールを直観的にシンプルにすることが大切だ。CAは、これまでに製品群をよりスマートにして、変化の波によって直面するさまざまな課題を解決できるようにした」と説明。「CAの製品群は、企業の競争力を強化し、さまざまな成功をもたらす。みなさんには劇的な結果を享受してもらいたい」と呼びかけた。

 CA Worldの会場では、アジャイルやセキュリティ、DevOps、メインフレームなど、幅広い領域で20種類を超える新製品や製品の機能強化を示した。製品ラインアップは着実に強化しており、幅広い顧客に対応する仕組みは順調に整いつつある印象だった。

 恒例となったラスベガスでの開催は今回で一区切りとなり、来年のCA Worldは、米マイアミに舞台を移して開催される。モダン・ソフトウェア・ファクトリを軸としたビジネスについて、さらにギアを上げることを宣言したCAテクノロジーズが、次の1年でどこまで加速できるか。今後の展開に注目だ。
 

アジア太平洋日本地域の責任者に聞く
日本市場の位置づけと事業展開の方針は

 今回のCA Worldでは、日本市場を統括するマーティン・マッケイ・アジア太平洋日本(APJ)地域プレジデント兼ジェネラル・マネージャが、週刊BCNの単独インタビューに応じた。日本市場の位置づけについて「APJ地域で一番優先度が高い」と語り、パートナーとの関係をより一層、強化する考えを示した。

日本は「優先度が高い地域」

――日本の市場についてどのようにみているのか。
 
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マーティン・マッケイ
アジア太平洋日本(APJ)
地域プレジデント兼
ジェネラル・マネージャ

マッケイ 日本はAPJ地域で一番優先度が高く、グローバルでも注力するマーケットだとみている。理由は三つある。まずは米国に次いで二番目に市場が大きいこと。二つめは、いい顧客がたくさんいること。そして三つめは、20周年を迎えた日本CAのチームがよく機能していることだ。

――日本の顧客に対する考えは。

マッケイ 日本の顧客は、多くが保守的で、なかなか変えられないのは事実かもしれない。しかし、チャレンジに対しては前向きに取り組もうという姿勢がある。ゆっくりではあるが、今後、デジタルトランスフォーメーションに対応していくだろう。

――モダン・ソフトウェア・ファクトリは日本で浸透するか。

マッケイ モダン・ソフトウェア・ファクトリには、DevOpsやアジャイルマネジメントなど、いろいろな入口がある。日本の顧客がデジタルトランスフォーメーションにチャレンジするうえで、非常にマッチする考えだと思う。すでに土壌はできあがっているため、可能性は大いにある。これから日本の市場にたくさん投資し、日本語に対応した製品をどんどん投入していくつもりだ。

――パートナーとの関係は。

マッケイ パートナーとは非常にいい関係をもっているし、今後も決して変わることはない。われわれにとって欠かせない存在だ。APJ地域では、パートナーを非常に重要視している。ビジネスはパートナーが増えれば大きくなるのが一般的だが、ただ数を増やせばいいというわけではない。大事なのは質だ。これからは、既存のパートナーとの関係をさらに強化し、一緒にきちんとした戦略や実行力などの醸成に力を入れていく。