単体売りからソリューション販売へ

 「日本はデスクトップ仮想化(VDI)市場が右肩上がりで進捗している」。そう話すのは米デル クラウド クライアントーコンピューティング(CCC)事業本部でVDIをグローバルで統括しているランス・ポウラ副社長だ。調査会社のIDCも日本のシンクライアント市場は右肩上がりで推移しており、2016年~21年の年平均成長率は7%ほどと予想している。VDIが伸びる要因は何か。

働き方改革が
新たな市場を切り開く

 VDIの特徴はセキュリティの高さと管理のしやすさだ。端末に情報を残さず、クラウドで管理するため、情報漏えいを防ぐことができる。さらに、クラウド上にソフトウェアを置くので、端末ごとのアップデートやバッチの管理が不要になる。こうした利点により、ヘルスケア、教育、金融などの業種が導入している。しかし、今VDI市場を押し上げているのは働き方改革だ。
 
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Dell Latitude 3480
 
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米デル
ランス・ポウラ
クラウド クライアントー
コンピューティング
事業本部
副社長

 大企業を中心に、どのデバイスからでもデータにアクセスできるようにする取り組みが進んでいる。ポウラ副社長は来日した際、「ファットクライアントを撤廃し、シンクライアントに置き換えるという思い切った改革を行ったお客様とお会いした。30拠点のオフィスにシンクライアントを配置し、どの拠点からでも同じように、そしてセキュアにデータにアクセスし、仕事ができる環境を構築していた」と話す。また、この顧客は、ファットクライアントを導入していた時はトラブルがあった際、都度ITスタッフを拠点に派遣していた。しかし、シンクライアントに置き換えたことで、データセンター側でほぼすべて対応ができるので、現地に人を派遣する必要がなくなり、コストの削減、効率性の向上を実現できたという。

 なお、働き方改革は、すぐれたITCにより加速されるが、ITCがあればすべてが解決できるわけではない。十年以上日本市場をみているポウラ副社長は、「日本はカルチャー的に柔軟な働き方という観点で、米国に比べ3~4年遅れている印象がある。カルチャーを変えていくには大企業のトップからマインドを変えていかないといけない。そこが大きな切り口となる」と指摘する。

デルのVDI戦略
導入支援サポートを開始

 VDI市場で、デルがシェアを取るため、パートナーとの連携体制、導入を支援するサポート体制、働き方改革にマッチする端末の提供に取り組む。

 パートナーとの連携では、シンクライアントだけではなく、サーバーなどのインフラストラクチャとソフトウェア、サービスをVDIソリューションとして提供する。とくにインフラストラクチャとしてハイパーコンバージドインフラ(HCI)を用意し、導入や管理に関する課題を解決する。インフラのうえで動くアプリケーションはデルで提供するものだけでなく、サードパーティの製品やサービスと組み合わせることも可能だ。それによりパートナーと連携して付加価値をつけることができる。

 導入支援として、「Dell EMC VDI Complete Solutions」を用意した。VDIおよびアプリケーション仮想化テクノロジーを検討している企業に対して提供するサービスで、「統一されたサポートを通じて購入、導入、管理を容易にすることができるため、一般的に導入の障壁となっている課題を解消できる。また、ニーズにあわせて、柔軟に構成をカスタマイズでき、少ない初期費用で、インフラからエンドポイントまでトータルでのVDI環境構築が可能になる。しかも、検証および実証済みなので、高い信頼性を維持しながら、短期間に稼働させることができる」とポウラ副社長は説明した。最小構成は100ユーザーからで、中小企業のみならず、大手企業でもステップを踏んだ導入が可能だ。また柔軟な課金形態を用意。従来であれば膨大な初期投資が必要となるが、月額課金にすることで、運用費としてならすことができる。

 端末面では、ビジネス向けノートPC「Latitudeシリーズ」をベースにしたシンクライアント端末「Dell Latitude 3480」を用意した。OSにはWindows 10 IoT Enterpriseを採用し、14インチのフルHDディスプレイを搭載。Citrix XenDesktop、Microsoft RDS、VMware Horizonなどの仮想デスクトップブローカーに接続できる。4Gの通信に対応し、SIMカードのスロットを内臓している。このほか、手のひらサイズの小型モデル「Wyse 3040」も発売した。クアッドコアCPUのインテルのAtom x5-Z8350を採用し、最新のWyse Thin OS 8.4を稼働させることができる。

販売チャネルを強化
日本市場の成長に好感触

 現在、CCC事業において、チャネルを通じた販売比率は80%に達しており、新たなチャネルパートナーも増加しているという。10月18日には、日本において、約30社のチャネルパートナーを集めたイベントを行い、システムインクデレータを通じたシンクライアントの販売チャネル拡大にも取り組んでいる。

 さらに、従来デルもEMCもVMwareも別々のチャネルをもっていた。これを一本化することで世界全体で一つのプログラム、一貫性のあるプログラムとして展開できる。

 ポウラ副社長は、「これまではボックス単体で販売しており、販売店としてもなかなか利益を出しにくかった。しかし、ソリューションとして販売することで利益をしっかり出せる構造になる。調査会社はシンクライアント市場の成長率は7~8%といっているが、日本の顧客と実際に話をした感触だとその予想を上回りそうだ」と期待を寄せる。(山下彰子)