官民、業界団体が連携強化

 近畿地区では、官民連携でIoT(Internet of Things)を推進する動きが本格化している。昨年8月には、近畿圏にある情報システムやソフトウェア、センサデバイスに関連する電機計測器などの関連17団体の推進連絡会議が発足。各種産業でIoT関連の案件を発掘し、各業界が協力して取り組む体制が整備された。また、近畿圏の経済活性化に一役買うイベントとして、大阪府が誘致している2025年開催予定の「国際博覧会」に向け、業界団体が同一テーマで共同イベントを年内に複数回開催する。官主導で業界間の連携がここにきて一気に強化され、IoT需要の取り込みに拍車がかかりそうだ。

横串でアイデアソン

 昨年8月、近畿経済産業局(近経局)が主導し「関西ものづくりIoT推進連絡会議」が発足した。同会議には、IT関連団体、電機計測器関連団体、電子機器・電子部品関連団体などから17団体が加わった。16年8月までは、大阪、京都、和歌山にある地域のIT関連7団体で構成する「近畿情報システム産業協会(KISA)」が近経局との連携や業界団体間の事業推進役として存在していたが、16年に解散。これに変わる組織として、ソフトウェア開発の関連8団体で、同時期に「Kansai IT Synergistic Society(KISS)」が発足している。
 
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近畿経済産業局
次世代産業・情報政策課長
森下剛志 氏

 しかし、近経局は、「国が進める『Connected Industries』を関西全域で推進するうえで、より密に複数の業界関係者が横断的に連携ができる組織が必要だ。関西にある業界団体は、首都圏のそれと比べて小規模であり、大きな動きをつくるのに限界がある」(森下剛志・次世代産業・情報政策課長)とし、同連絡会議を組成した(組織変遷は図1)。

 同推進連絡会議が発足する前、近経局は「ゆるやかなネットワークをつくる」目的で、今回の団体の前身として「IoT推進ハブ関西」を立ち上げている。ここでは、各業界が連携し近畿圏のIoTを推進する旨、合意形成を図った。その第一弾として昨年11月に開催した計測・制御分野のソリューションが集まる「計測展」(日本電気計測器工業会=JEMIMA主催、近経局など後援)で、同ハブ関西の参加メンバーがファシリテータになり、同イベント内でアイデアソンを展開している。こうした動きを経て、「各業界団体の結束が強まった」(森下課長)と話す。今年1月には、同推進連絡会議にワーキング・グループ(WG)が立ち上がり、IoT市場の創出に向け動きが本格化したという。

 近経局によれば、同推進連絡会議では、IoTによるソリューション創出支援や、業界が連携し近畿圏の中小企業向けにIoT導入を支援するほか、高度人材育成の支援や海外との連携を模索する。具体的には、関西ならではの「Connected Industries」の未来像を探るために、昨年同様に「計測展」などでアイデアソンを実施したり、共同イベントを行うほか、IT関連団体と関西が誇る製造メーカーなど、ものづくり関連企業と連携した独自のソリューションの創出をねらう。森下課長は、「近経局は、各業界団体や企業のハブとなり、マッチング役を担う」と、近経局など官の横のつながりを生かし、産業界とIT業界のつなぎ役を果たす考えだ。

官がマッチングの一翼を担う

 情報サービス産業に関していえば、近畿地区は首都圏に次ぐ売上高を上げている市場だ。しかし、各ITベンダーの事業規模は小さく、首都圏などの大手ITベンダーの下請けで売り上げを賄っている傾向が強い。近経局では、「近畿圏は、組込み・制御ITベンダーの集積地であり、この特色を生かす」(森下課長)としているが、地元ITベンダーにその認識は薄い。IT業界団体幹部に聞くと「集積地とは思っていない」との返答がくるほど。IT業界間でも、ソリューション系と組込み・制御系ベンダー間の連携性が薄いのが実情のようだ。ただ、全国的にみても、大手電機を中心とした製造メーカーが多く存在する近畿圏では、IoT関連の需要が高いことが予想される。こうした企業から需要を取り込むうえで、中小規模のITベンダーが1社だけで、あるいは小規模団体だけで、案件発掘することには限界がある。

 近経局が業界横断でマッチングしたIoT推進例として挙げているのは、16年度に同局の「スマート工場実証事業」で実現したプラスチック業界が、共同で取り組んだIoTシステム導入だ(図2)。この取り組みには、近経局、西日本プラスチック製品工業会、成形業向け生産管理システムなどを提供するムラテック情報システムの3者が、国内主要成形機メーカー5社、日本産業機械工業会、周辺機メーカー2社など、横断的な業界が参加した。森下課長は、「プラスチック業界では、複数メーカーの成形機を使って製造している。高精度な製品製造を実現するには、成形条件情報などの把握や収集、活用が重要だ。だが、成形機のデータフォーマットがメーカーごとに異なり、中小企業の多い業界側では収集などに限界があった」と、業界横断でビッグデータを収集・活用する仕組みができ、生産効率を上げるための下地ができたとしている。
 
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 このほかにも、近経局は靴下製造の集積地である兵庫県加古川市に対し、13年から栽培を開始した綿花(かこっとん)を原材料にした地場産品の靴下などの製造を支援している。同市への取り組みでは、製造の標準化や流通の仕組み構築、製造メーカーとの連携などを加速する。近畿圏には東大阪市など、組立加工業者の集積地が存在する。「こうしたものづくり企業をIoTの取り組みで活性化したい」(森下課長)と、同推進連絡会議を中核として、アイデアを形にしていくと意気込んでいる。

 近経局は明らかにしていないが、全国的な流れからすると、今後は総務省傘下の近畿総合通信局と同推進連絡会議の連携が始まる可能性が高い。同通信局では、「近畿地域IoT実装推進連絡会議」という組織があり、こことIoTの通信関連の領域で連携が加速する見通しだ。

IT系3団体が「SDGs」でイベント

 ここ数年、IT業界団体が連携して新たな需要を創出するため、近畿の団体間が共同でイベントなどを開催するケースが増えている。今年は、日本情報技術取引所(JIET)関西支部、Rubyビジネス推進協議会、日本電気計測器工業会(JEMIMA)関西支部の3者が、各団体主催で開催するイベントに相互に参画する計画だ(図3)。この連携イベントを主導するのは、JIET関西支部の支部長でRuby協にも参画する石丸博士・リバティ・フィッシュ社長。2年ほど前から、JIET関西支部のビジネスセミナーでは、他団体との連携を実現していたが、今回の場合、3団体が共通テーマを掲げ、それぞれのイベントでテーマに沿った展示やセッションを設ける。共通のテーマは、現在大阪・関西が誘致している「国際博覧会」でテーマとして掲げている「SDGs(持続可能な開発目標)」を設定した。同博覧会では、SDGsの達成に貢献するうえでの日本や世界の取り組みが主要テーマになる。石丸社長は、「SDGsをテーマに、エネルギー、自然環境、高齢者・障がい者福祉などの観点で、IT業界からアイデアを出したい」と話す。
 
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 今回の共同イベントは、3月にJIET関西主催の「JIET関西ビジネスセミナー」、7月にRuby協主催の「Rubyビジネス創出展」、11月にJEMIMA関西支部が主催する「計測展」を計画している。JIET関西支部のイベントでは、SDGsに関連したテーマとして「ユニバーサルデザイン」を掲げ、設備や製品のユニバーサルデザインを企画・設計するミライロや、社会基盤の設備を設計・開発している大和ハウスなどを招き、業界横断で議論をする。

 Ruby協の創出展では、センサを使った福祉施設の設備やIoTの取り組みに関する内容を主に取り扱う。創出展では、今回初めてユーザー企業の情報システム担当者で構成する「Ruby関西」が加わり、2日間にわたり開催する。計測展では、人工知能(AI)を加えたテクノロジーで、IT業界と産業界が連携してユニバーサルデザインに寄与する取り組みを示していく予定だ。「各イベントでは、産業界やIT業界関係者だけでなく、大学生や専門学校生などの参加も促す。専門学校などでIoTの教育プログラムを導入する検討が進んでいるため、IT業界で貢献できるきっかけをつくる」(石丸社長)という。

 共通テーマで複数団体が相互に働きかけることで、IoTなどに目的意識をもった人が来場することが見込まれる。IT業界団体からすれば、可能性が高い見込み案件を発掘する場になるというわけだ。官民が連携し産業界・IT業界の横の連携が生まれ始めた近畿地区。IoTやAI、ビッグデータの解析に伴う技術力に課題は残るものの、需要創出に一定の効果を上げそうだ。