IoTの活用において、センサの監視対象が設定された閾値(しきいち)に達したときに信号を送るようなケースでは、データ量は小さく、通信方式が重要視されることは少ない。また、温度管理センサから定期的に温度情報を送るようなケースでも、送信のデータ量は大きな問題とはならない。しかし、音声や動画のような大きなデータを扱うIoTソリューションでは、通信方法が重要となってくる。送信で遅延が発生すると、音声や動画をトリガーにした処理を実行できないからだ。そうしたなかで、欧州を中心に採用されているのが「DECT(Digital Enhanced Cordless Telecommunications)」である。

動画や音声に最適な通信方式をアピール

 「例えば、Wi-Fiのようなベストエフォート型の通信方式は、音声や動画などを送る場合、遅延が発生しやすい。そのため、リアルタイムの処理に向いていない。DECTは帯域保証型のため、音声をトリガーにするようなIoTソリューションで活用できる」と、DECTフォーラム ジャパンワーキンググループで代表を務める森川和彦氏は、DECTが音声や動画の転送に強いことをアピールする。

 DECTは、欧州電気通信標準化機構(ETSI)で標準化された免許不要の無線通信方式。屋外で300m、屋内で70m以上と、免許不要ながら広範囲で使用できる。電子レンジと干渉しないのも強みの一つで、家庭向けのコードレス電話では日本では100%の普及率を誇り、多機能化が進むコードレスタイプのドアフォンでも採用されている。

 「DECTは消費者に認知されていないものの、コードレス電話などで知らずに使ってきている。ただ、固定電話が減り続けていることから、将来を見据え、DECTの新たな活用方法を模索している。その有力な選択肢の一つとして、IoTに注目している」と、DECTフォーラム ジャパンワーキンググループの武久吉博氏はDECTの状況を説明する。
 
DECTフォーラム ジャパンワーキンググループで
代表を務める森川和彦氏(日本DSPグループ、写真中)、
同ワーキンググループの佐藤繁雄氏(ダイアログ・セミコンダクター、写真左)、
武久吉博氏(パナソニック)

 DECTは1.9GHz帯を使用し、2.4GHz帯のBluetoothやWi-Fiと干渉しないため、双方を同時に利用できる。また、先述の通り、電子レンジと干渉しないため、欧州ではDECTを搭載するスマートフォンのほか、ブームとなっているスマートスピーカーでも採用されるケースがあるという。他との干渉が少なく、音声や動画に強いというDECTの特性を生かした格好だ。

 メリットの多いDECTだが、日本では知名度の低さゆえ、コードレス電話などの特定商品でしか採用が進んでいない。「まずは、DECTを知っていただくことが重要。気になったら、ぜひDECTフォーラムに問い合わせていただきたい」と、佐藤繁雄氏。監視カメラの映像をリアルタイムで分析するようなニーズは、AI(人工知能)の普及によって確実に増えている。あとは、通信関連メーカーの評価次第である。(畔上文昭)