NEC関西支社(谷口充・支社長)は、地場の自治体や教育機関、観光地と連携して、先端技術を駆使したデジタル革新を推し進めている。生体認証やAI、MR(複合現実)などNECが強みとする技術を軸に、児童が通学するときの見守りサービス、自治体の問い合わせ窓口へのチャットボットの導入、ローカル5GとMRを組み合わせた新しい観光体験の創出といった分野で協業。NECとユーザーがともにアイデアを出し合い、「両者の共創によってデジタル革新を進めていくアプローチ」(谷口支社長)に力を入れる。

谷口 充 関西支社長

 共創の中核的役割を担っているのが関西支社内に開設した共創空間のNECフューチャー・クリエイション・ハブ関西で、2019年9月に開設してから自治体や教育機関など多くのユーザーが足を運んで先端技術を体験した。ユーザーが先端技術に触れることで、「これがあれば、こんなサービスができるんじゃないか」という気づきを得て、ユーザー自身のデジタル革新の意識を啓発。ユーザーが抱える課題を解決する従来型のソリューション指向とは一線を画し、「デジタルを駆使した新しいサービスをNECとユーザーがともに創出するコンセプトが高く評価されている」(同)と話す。

 直近では、コロナ禍の対応で追われる自治体向けにチャットボットで問い合わせ業務の効率化を図ったり、奈良県平城宮跡でローカル5GとMRを組み合わせて、ありし日の平城宮を体験する実証実験を21年2月に実施予定であるなど、NECフューチャー・クリエイション・ハブ関西をきっかけとした共創事例が出始めている。文教分野では、京都橘大学が21年4月に工学部情報工学科を新設するのに先立ち、最先端のITやAIの教育研究で協定を結んでいる。

 実証実験などを通じてユーザーと共創していくアプローチで課題となるのは、まとまった売り上げが立つまでに時間がかかることだ。そこで、NECでは今年度(21年3月期)から従来の西日本地域の支社支店の営業地域にかぶせるかたちで「西日本統括支社」を新設。谷口支社長が西日本統括支社長を兼務し、滋賀県から鹿児島県までの地域のデジタル変革関連ビジネスを担う体制をつくった。支社支店は既存のビジネスを伸ばしつつ、西日本統括支社はユーザーとの共創を通じて従来になかったデジタル活用のビジネスを創出。「ある程度の売り上げのめどがついた時点で支社支店に引き継ぐ」仕組みにした。
 
NECフューチャー・クリエイション・ハブ関西では、
先進技術によって暮らしやビジネスが変わる未来像を体験できる

 SI案件が従来のオンプレミス型からクラウドネイティブ型へと比重が移るなか、支社支店に多くのSEが張りついて開発やサポートを行うビジネスが、将来的に伸び悩むことが考えられる。西日本統括支社はビジネスのクラウド化、オンライン化の比重が増えることを見越して、NECの新しい地域ビジネスを担っていく組織へと発展させていくことも視野に入れる。(安藤章司)