米ブロードコムと米ヴイエムウェアは米国時間5月26日、ブロードコムがヴイエムウェアの発行済み株式すべてを取得することで合意に至ったと発表した。買収金額は610億ドル(約7兆7500億円)。合わせてブロードコムはヴイエムウェアの80億ドルの純負債を引き受ける。買収は現金と株式によって行われ、ヴイエムウェアの株主および規制当局の承認が得られれば、2023年10月期中に完了する見通し。18年に発表された米IBMの米レッドハット買収(340億ドル)などを抜き、企業向けソフトウェアベンダーの買収金額では過去最高となる。
ブロードコムのソフトウェア部門が「VMware」ブランドに
(ブロードコムの発表資料より)
ブロードコムはネットワーク機器用の半導体を主力としていたが、近年はソフトウェア企業の買収を強化しており、18年にメインフレーム向けソフトウェアやアジャイル開発ツールを手掛ける米CAテクノロジーズを189億ドルで、19年にセキュリティベンダー米シマンテックの法人向け事業を107億ドルで買収していた。ブロードコムの既存事業にヴイエムウェアの売上高(22年1月期は129億ドル)を加えると、ブロードコムの売り上げ全体のおよそ半分をソフトウェア部門が占める形となる。
ヴイエムウェアは1998年に設立。04年に米EMCによって買収され、その後15年に米デル(現米デル・テクノロジーズ)がEMCを買収したことでデル・テクノロジーズ傘下となったが、21年11月に同社から分離し再び独立企業となっていた。デル・テクノロジーズのマイケル・デルCEOはヴイエムウェア株の40.2%を所有する筆頭株主で、デル・テクノロジーズからの分離後もヴイエムウェアの取締役会会長を続けていた。デル会長は今回の買収に関して賛成票を投じている。
買収完了後、ブロードコムのソフトウェア部門は「VMware」のブランドで運営され、ブロードコムが持つITインフラやセキュリティに関するソフトウェアが、新たなVMware製品群として統合される予定。
ヴイエムウェアは近年、従来主力としていたサーバー仮想化基盤に加えて、コンテナ環境の運用・管理を統合できる「Tanzu」プラットフォームの訴求に力を入れていた。ブロードコムのソフトウェア部門となった後に、この戦略をどのように展開していくかが注目される。(日高 彰)