アドビは6月30日、本年度の事業戦略説明会をオンラインで開き、神谷知信社長は法人事業の推進に向け「相談できるアドビ」をキーワードとして顧客への支援体制を充実させる方針を示した。カスタマーエクスペリエンスマネジメント(CXM、顧客体験管理)やデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を目指す企業や官公庁、教育機関などに対し、戦略策定からシステム設計・導入、活用まで一気通貫でサポートする考えだ。
神谷知信 社長
支援は「戦略」「設計・導入」「成果創出」の3フェーズに分かれる。データ、クリエイティブ、業務の観点から戦略を定めたのち、システムや業務要件の定義・設計、開発・コーディング、クリエイティブ制作を経て、リリース後の成果測定や運用定着までを幅広く手助けする。
近年、CXMやDXに取り組む顧客は拡大しているものの「どこから取り組んでいいかわからないという相談が非常に多い」(神谷社長)という。このため支援の中心となるコンサルティング部隊の人員を積極的に増強していくとし「顧客と一緒に(CXMやDXを)つくり上げ、新しいパートナーシップのかたちを実現したい」と意気込んだ。
法人向け事業については、昨年度にコンサルや運用支援を手掛けるチームを組織している。神谷社長は、人員を着実に増やしているが、拡大する一方の顧客ニーズには十分に対応できていない面もあり、人材確保の面で課題があるとした。
このほか、コンテンツ制作を支える「Creative Cloud」、業務デジタル化に資する「Document Cloud」、デジタルマーケティングの統合ソリューション「Experience Cloud」の三つのソリューション群について、現状や今後の展望が示された。
Creative Cloudでは、2021年12月に発表した無料アプリ「Adobe Express」を紹介。テンプレートやデザインアセットを豊富に用意し、知識や技術がなくても多様なクリエイティブ制作が可能となる。神谷社長は「中小企業にとって大きなメリットのあるアプリである」とし、ソーシャルメディア上でのブランディングなどに活用してほしいと期待した。
Document Cloudに関しては、電子署名サービス「Adobe Acrobat sign」が公共部門で採用が進んでいる点をアピール。ただ、欧米と比べると遅れている領域であることから、市場は大きいとみて今後も官公庁や地方自治体への導入を働きかけると強調した。
Experience Cloudをめぐっては、消費者はパーソナライズされたデジタルコンテンツを求める傾向が加速しており、顧客のニーズが高まっている領域であると解説した。一方で、どのように課題を解決すべきかわからない顧客も多く、ユーザー表彰などを通じて、成功事例の共有を進めていくとした。
デジタル人材の育成にも注力しているとし、小中高校向けライセンスは前年比約60%増、大学・専門学校向けは約15%増になったとした。
(藤岡 堯)