バックアップソフト「ActiveImage Protector」などを手がけるアクティファイが、ソフトウェア製品のディストリビューター業から自社製品ビジネスに転換を図って、今年で15年になる。週刊BCNの取材に応じた佐藤尚吾・取締役営業本部長は、今後もデータ保護と確実な復元を実現する製品開発に注力する方針を強調するとともに、国内のデータセンターと連携したストレージサービスの提供なども視野に入れ、より幅広いユーザーニーズをカバーしていく考えを示す。
(日高彰、大向琴音)
自社製品事業への転換から15年
アクティファイ(2020年にネットジャパンから社名変更)は、海外のソフトウェアベンダーの製品を日本市場向けにローカライズして販売する事業を目的として1996年に創業したが、08年にビジネス戦略を転換し、自社製品の開発に着手した。翌年、最初の製品となる「ActiveImage Protector 2.5」をリリース。当時は、システムをシャットダウンせずにバックアップを実行できる製品が限られていたことから、オンラインバックアップに対応した同製品はヒットし、現在まで主力の商材となっている。
佐藤尚吾 取締役
今では多数の競合製品が存在するバックアップソフト市場だが、堅実な成長を続けているという。その理由について佐藤取締役は「データ保護の現実的なソリューションを提供している」こと、そして「トラブルがあった時の対応が手厚い」ことを挙げる。簡単に導入できる使い勝手の良い製品を手頃な価格で提供しており、さらにサポートをメーカーの技術部門が自らエンドユーザーに提供している点が、多くの企業から支持されている理由だという。
佐藤取締役は「当社は製品提案で夢みたいなことは語らない代わりに、国内のユーザーから求められるポイントをきちんと押さえることを重視している」と述べ、革新的な機能や独自の技術をアピールすることよりも、幅広い環境のバックアップに対応し、障害時には確実に復旧できるようユーザーを支援することに重点を置いていると説明する。例えば、製品がうまく導入できない原因がOSの設定などに存在するときも、「それはOSメーカーに聞いてください」と門前払いするのではなく、できる限りユーザーに寄り添って解決策を探るとしている。
エンジニアの評価で売れる製品を目指す
ソフトウェア業界では提供形態をサブスクリプション型に移行する動きが広がっているが、同社はサブスクリプションに加え、従来と同様に永続ライセンスの販売も継続している。ただし、永続ライセンスの提供であっても「ワンショットではなく、お客様と長くお付き合いする」(佐藤取締役)ことを重視している。特にActiveImage Protectorは、現場のシステム管理者や販売パートナーのエンジニアから支持の輪が広がったことで現在まで続く製品になったことから、その評価を落とさないためにもアフターサポートには力を入れる。
場合によってはコストをかけてでもユーザー満足度を優先し、サポートのために地方のパートナーと同行する形で現地の顧客のもとを訪問することもある。「『動かない』『戻らない(データを復元できない)』というトラブルは少なくないが、顧客やパートナーからは、『もしトラブルが起きるのであれば、(サポート窓口にすぐ連絡がつくから)アクティファイ製品を使ったほうがいい』との声もいただいている」(佐藤取締役)。
佐藤取締役は、「ActiveImage Protectorを“コミュニティ営業”で売れる製品に育てていきたい」と話す。エンジニア向けの勉強会や技術支援、パートナー向けの営業・サポート同行などの機会を増やし、製品のファンになったユーザーが所属企業の区別なく情報交換するような場を形成し、口コミで販売が伸びるサイクルを加速することを目指す。
国内DC活用したストレージサービスを検討
同社は現在のところ自社のクラウドサービスを展開していないが、今後の取り組みとして、バックアップデータを保管するストレージサービスを提供するため、ストレージサーバーの開発や国内のデータセンター(DC)事業者との協業を進めているという。まずは中小企業をメインターゲットとする考えで、将来的には各地方にあるDCを連携し、バックアップデータを分散化できる構成の実現を視野に入れる。
また、最近最も問い合わせが増えているのがランサムウェア対策だ。中小企業の間ではランサムウェア対策としてバックアップ環境を備えるという考え方がまだまだ認知されていないのが現状という。ランサムウェアに関しては、警察や政府機関が推奨する対策やガイドラインに沿ったデータ保護をActiveImage Protectorのユーザーが行えるよう、具体的な資料の作成を進めている。
直近では、データベース、Webサーバー、ファイルサーバーといったバックアップ対象に応じてより的確なチューニングを行い、バックアップ時間を短縮する機能のリリースを予定している。佐藤取締役は、「新型コロナによってさまざまな業界が疲弊してしまっているが、予算が限られている企業にとってもデータは重要な資産だ」と指摘し、中小企業にとっても現実的で導入しやすい製品を提供することで、データ保護の考え方を広げていく意向を示す。