日立製作所は5月15日、生成AIの社内外での安全で効果的な活用の推進を目的とした専門家組織「Generative AIセンター」を設立した。同センターを中心に日立グループ内での生成AIの利用を進め、ユースケースの創出を図る。社内で蓄積された知見やノウハウをLumada事業に取り入れ、6月から生成AIに関するコンサルティングサービスを提供する方針で、同センターを中心に生成AIの社会実装を加速させる考えだ。
(大畑直悠)
インターネット上の膨大なデータを学習し、画像や文章などを作る生成AIは、さまざまな業務改革に寄与すると期待されているが、一方で情報漏えいや著作権侵害、プライバシー侵害、虚偽情報の作成などのリスクが懸念されている。そうしたことからGenerative AIセンターでは、AI研究者以外にもITやセキュリティ、法務、品質保証、知的財産など業務のスペシャリストを集め、リスクマネジメントをした上で、活用を図る。
吉田 順 本部長
同社のデジタルエンジニアリングビジネスユニットData&Design本部の吉田順・本部長は「生成AIの利用とリスクマネジメントには社内外のさまざまな知見を掛け合わせる必要があり、特定部署だけでは対応が困難だ」と指摘。このため、同センターが生成AIに関する知見を集約し、組織を横断したハブ機能を果たしていくという。
具体的な取り組みとしては、日立グループ向けに生成AIのユースケースの創出や、独自の生成AIに関する技術を組み合わせたアプリケーションの開発、AIの品質向上に長けたエンジニアの育成などに取り組む。加えて、GlobalLogicや日立ヴァンタラなどのシリコンバレーのIT企業も含めた連携コミュニティをつくり、顧客やパートナーへのナレッジやユースケースを共有する。
さらに生成AIを業務で利用する上でのガイドラインを策定するほか、5月末には業務の効率化と生産性向上を目的に「Generative AI アシスタントツール」の社内導入を開始するとし、同センターがサポートしながら議事録の自動生成やシステム実装におけるローコード/ノーコード化を進める。
同センターで蓄積したノウハウは同社のLumada事業に取り込み、6月から社外向けに提供する予定で、具体的には生成AIのコンサルティングサービスを提供する。吉田本部長は「現在Lumada事業は200超のソリューション、1200件以上のユースケースがあるが、その中で生成AIを組み合わせることで得られる付加価値や業務効率化を考えていく」とした上で、「生成AIが持つポテンシャルは非常に高いだろう」との認識を示した。また「社内や顧客からはコンタクトセンターやカスタマーサポートで使いたいという要望が多いが、こうした需要をつかんでユースケースを拡大させていきたい」と話した。
そのほかLumadaアライアンスプログラムの参加パートナーである日本マイクロソフトと協業し、「Azure OpenAI Service」と連携した環境構築支援サービス、運用支援サービスを提供する予定だ。吉田本部長は「日本マイクロソフトとの共創は第1弾。新しいユースケースを模索するために、今後もパートナーとの共創が重要になる」との考えを示した。