内田洋行の2023年7月期決算は、売上高が前期比11.1%増の2465億4900万円、営業利益が84億3600万円で、GIGAスクール構想を受けて過去最高となった21年7月期に次ぐ業績となった。8月31日に開いた記者説明会で大久保昇社長は、「直近5年間の売上高の年平均成長率は10.2%で、成長ラインをベースアップできている」と手応えを示すとともに、今後の成長戦略を明かした。教育ICT事業を含む公共関連事業では、ネットワークの強化に向けた案件獲得を継続し、GIGAスクール構想以降の需要を獲得を目指す。
大久保 昇 社長
公共関連事業の売上高は前期比8%増の807億800万円で堅調に推移。今後については「GIGAスクール構想で導入した端末の更新は25年からがピークで、今は次に向けて準備する段階」と語り、成長戦略を示した。具体的には、GIGAスクール構想以降は、1人1台の端末を円滑に運用するための、ネットワークの強化やセキュリティへのニーズが高まっているとした。大久保社長は「ネットワークがボトルネックになっている学校は多く、投資は拡大している」と語り、案件獲得に注力する考えだ。
また、教室を協働的な学びの場へと改修する案件の受注も進んでいるという。大久保社長は「これまでは大学での採用が多かったが、小中学校でもPC教室を改修したいという動きが生まれている」と述べた。加えて、教育現場のデータ活用に向けた取り組みにも力を入れる考えで、教師の指導に児童生徒の学習データを用いたり、学習支援のために自治体と学校のデータを組み合わせたりする取り組みを加速させる。大久保社長は「まだまだ売り上げは少ないが、先進的な事例をいくつも生み出せている」とし、今後の成長に期待を寄せた。
そのほか、オンライン上で試験を実施するための基盤を提供するルクセンブルクのOpen Assessment Technologiesを5月に子会社化したことに伴い、将来的な教育事業のグローバル展開にも意欲を示した。同社の基盤は経済協力開発機構による国際的な学習到達度調査で採用されている。
オフィス関連事業に関しては、売上高が前期比5.6%増の510億9200万円で、コロナ禍以降のオフィス回帰やハイブリッドワークの流れから、オフィスのリニューアルやフリーアドレス化に対応するソフトウェアへの引き合いが高まった。大久保社長は「高度成長期にできたビルの建て替えに伴い、オフィスの改修の案件が大企業だけではなく中小企業でも増えていくだろう。本社オフィスだけではなく、R&D部門の生産性向上を目的とした案件も増えている」と話し、引き続き需要は増加するとの認識を示した。
民間事業者向けの情報関連事業では、食品業を中心に、中小企業の基幹システムの案件獲得が好調を後押しし、売上高は16.4%増の1137億2100万円となった。
(大畑直悠)