ワークスアプリケーションズは、製品ごとの最適な販売チャネルを2年余りかけて整備したことが追い風となり、2022年度(23年6月期)は6期ぶりに連結営業利益の黒字化を達成した。主力のERP製品の販売パートナーの拡充に加えて、ワークフローをはじめとしたSaaS系の製品は地域の複合機販社と協業を推進し、同業のERPパッケージベンダーとの製品連携なども行い、幅広く販路を開拓している。
(安藤章司)
直販指向が強かったワークスアプリケーションズだが、2021年からパートナービジネスを担う組織を立ち上げ、間接販売のチャネル開拓に取り組んできた。財務会計を中心とした主力ERP製品は、会計に強いコンサルティング会社や大企業向けERPの構築に長けたSIerを軸に据えている。ワークフローなどのSaaS製品については、地域密着でユーザー企業と向き合う地域の複合機販社や税理士、地銀などをパートナーとして迎え入れる施策に力を注いでいる。
秦 修 代表取締役 最高経営責任者
近年では地域の複合機販社がITソリューションを積極的に取り扱うケースが増えていることから、ワークフローやグループウェアなどのフロントエンド系の商材の重要な販路として位置づける。ERP製品では、ユーザーからの要求の約97%をパッケージの標準機能でカバーできる業務適合率の高さと、残り約3%の部分は優先的に開発して標準機能に取り込み、その後のバージョンアップをスムーズに行えるようにする同社ならではの特徴が評価され、コンサルティング会社やSIerのパートナーが順調に増えているという。
全国に拠点があるSIerや地域の販社、コンサルティング会社などで構成する認定販売店は約30社に増えるとともに、案件ごとに協業しているケースも含めれば「100社ほどと取引関係にある」と、秦修・代表取締役最高経営責任者は話している。
23年8月には自社の固定資産管理システムとマイクロソフトのERP「Dynamics 365」を連携させるための標準ツールを開発した。固定資産管理は、国内税制への対応や製造業の工場資産、小売業の店舗資産など業種・業態に応じた管理機能が求められる。大手ERP製品でも固定資産管理の部分に外部ツールを活用するケースが多いという。
また、23年4月には製品開発やSIサービスを担う子会社2社を本体に吸収する一方、22年末には建設業向けERPを担うワークスアプリケーションズ・フロンティアをMBO(経営陣による買収)によって独立させている。
組織再編でスリム化して業務の効率化を図るとともに、販売チャネルの拡充によって22年度第4四半期(23年4~6月)に売り上げが大きく伸長した。
通期では6期ぶりとなる連結営業利益の黒字化を達成したことについて、秦最高経営責任者は「本格的な成長軌道に戻り、再上場に向けてのスタートラインに立てた」と語り、手応えを感じている様子を見せた。