医療機関向けのデータ基盤事業などを手掛けるスタートアップのTXP Medical(TXP)とNTTコミュニケーションズ(NTTコム)は2025年の早い時期に、医療機関の臨床データに基づく分析結果を製薬会社などに提供するサービスを開始する。日本最大規模である900以上の検査値項目を有するTXPの臨床データと医学的専門知識に、NTTコムの秘密計算技術「析秘」を組み合わせ、プライバシーを高度に担保しつつ、付加価値の高いデータの利活用を目指す。
TXPは17年に創業。医療機関・自治体向け急性期医療データプラットフォーム「NEXT Stage」シリーズを開発・販売するほか、基盤で収集したデータと専門医集団による医学的知見を生かし、製薬企業や医療機器メーカーへのデータ分析・提供サービスも展開する。NTTコムとは24年10月に資本業務提携を結んだ。
創薬領域においては、電子カルテに由来する質の高いデータが求められている一方、プライバシー保護の観点から容易には利活用しにくい面がある。析秘は、情報を複数の断片データにして分散保持したままの状態で、復元することなく演算処理ができ、実用可能な演算速度や充実した演算バリエーションなどの特徴を有する。
新サービスはTXPの基盤から収集したデータをNTTコムの秘密計算技術で処理し、TXPで出力結果の分析を加えた上で顧客に提供する。サービスの質を高めるには情報元となる医療機関の獲得がかぎとなり、TXPは業務改善に大きく貢献するデータ基盤の導入メリットを訴求するとともに、データ提供の対価として製品利用の値引きを行うなど、医療機関側のインセンティブを高める施策を打ち出す構えだ。
TXP Medical
園生智弘 代表取締役
TXPの園生智弘・代表取締役は「これまでになかった医療データサービスを展開したい」と話した。NTTコム執行役員の福田亜希子・スマートワールド推進部長は、同社でもヘルスケア領域でのデータ分析ソリューションを手掛けているものの、内部に医療の専門家がいない点が課題だったとし、提携のシナジーに期待した。
(藤岡 堯)