三菱商事とデータセンター(DC)大手の米Digital Realty(デジタル・リアルティ)の折半出資会社のMCデジタル・リアルティは、生成AIなどで活用されるGPUサーバーの冷却方式は水冷式が主流になるとの見通しを示した。空冷式では気流速度を最大にしてもラック当たりの消費電力70kVAを冷却するのが限界だったが、水冷式にすることで約2倍の最大150kVAまで冷却できる。ただ水冷対応のサーバー設備は高価であるため「既存サーバーは空冷、消費電力の大きいGPUサーバーは水冷のハイブリッド方式が現実的な選択」と畠山孝成社長は話す。
畠山孝成 社長
最新のGPUサーバーは1台当たりの消費電力が10kVAほどで、一つのラックに10台入れることを想定している。「今後、GPUサーバー1台当たりの消費電力が15kVAに増えても対応できるよう設計した」(丁硯冬・営業本部シニアソリューションアーキテクト)としている。
丁 硯冬 シニアソリューションアーキテクト
直近の同社DCの利用例をみると、マクニカが「NVIDIA DGX H100」を採用したGPUサーバーの検証環境、Preferred Networksが大規模AI計算基盤、自動運転技術開発のチューリングが大規模GPUクラスターをそれぞれ構築している。チューリングでは計96台のH100を搭載した自動運転専用の計算基盤「Gaggle Cluster」を構築しており、自社にオンプレミスで設置した場合に比べて、構築開始から運用開始までの時間を約1年から3カ月程度に短縮。通常20ラック必要なところ高い冷却能力によって8ラックに圧縮できたとしている。
MCデジタル・リアルティでは高電力や水冷式の対応、拡張性を求められるケースが多くを占めているといい、先進技術にいち早く対応することで受注を伸ばしていく。
同社は首都圏と関西圏で計8棟のDCを運用しており、サーバー電源容量の合計は168メガワット。2025年12月には31メガワット、約2800ラックの新棟を印西市に開業予定で、これが加わることで計199メガワットに増える予定だ。畠山社長は「将来的に総サーバー電源容量の倍増を視野に入れる」と業容拡大に意欲を示す。
(安藤章司)