週刊BCNと、「Shure」ブランドの音響機器を展開するシュア・ジャパンは、5月20日と22日の2日間、「これで解決、ハイブリッドワークにおけるコミュニケーションの課題」と題した企業向けセミナーを共同で開催した。出社とリモートを組み合わせたハイブリッドな働き方が主流となる中、社内外のコミュニケーションをいかに円滑に行うかが課題となっている。セミナーでは、会議やコラボレーションの質を改善するテクノロジーが紹介され、企業の情報システム担当者や、IT製品やオフィス用品の提案・納入に携わる販売店各社が参加した。
シュア・ジャパンのオフィスで開催した週刊BCN共催セミナー
AI活用は音声によってさらに高度化
基調講演では、日本マイクロソフトでエバンジェリストを務める西脇資哲・業務執行役員が登壇し、「日本マイクロソフト社が考えるビジネスコミュニケーションの可能性」と題したプレゼンテーションで、AIによる仕事の効率化と、コミュニケーションの革新の可能性について説明した。
日本マイクロソフト
西脇資哲
業務執行役員
西脇業務執行役員は、米Microsoft(マイクロソフト)が提供するAIアシスタント「Copilot」のデモンストレーションを披露し、AIを活用することで、情報収集や調査、資料文書の要約など、ビジネスシーンで発生するさまざまな情報の処理を大幅に効率化できることを紹介。音声認識機能を活用し、AIへの指示を声で行うことで、同僚と対話しながら作業を進めるのと同じように、ステップバイステップで資料の作成や情報の理解を深めていける様子を実演した。
また、マイクロソフトはコミュニケーションツール「Teams」にも、音声の処理に関してAIを活用したさまざまな機能を追加している。同時翻訳機能では、リアルタイムの多言語翻訳が可能なだけでなく、翻訳後の音声も話者の元の声に近い声質を再現するなど、自然なコミュニケーションが可能になっている。議事録の自動作成機能では、従業員の声をあらかじめ登録しておくことで、誰がどの発言をしたかも自動的に記録することができる。
このような、AIや音声を活用した高度なコミュニケーション/コラボレーションを実現するため、マイクロソフトではオフィスの会議室で快適にTeamsを利用するためのソリューションとして「Teams Rooms」を用意している。Teams Roomsに対応したデバイスを設置した会議室では、PCや周辺機器の接続・操作を行わなくても、対応デバイスをワンタップするだけで、高い音声品質が担保された状態で会議を開始できる。西脇業務執行役員は、「AIの機能を使える環境がオフィスに整っていないと、(最大の効率で)業務を遂行することはできない」と指摘し、ユーザーの音声を収録するオーディオデバイスの品質が今後さらに重要になるとの見方を示した。
設計の手間を大幅削減した天井取り付け型デバイス
続いて講演したシュア・ジャパンの下村光生・マーケットディベロップメントマネージャーは、同社が発売を予定しているTeams Rooms対応会議デバイス「IntelliMix Room Kit」を紹介した。天井取り付け型のスピーカーフォン(マイク/スピーカー)、カメラ、操作用のタッチパネル、ミニPCがセットになっている製品で、オフィスの会議室に設置することで簡単にTeams Roomsの環境を用意することができる。
シュア・ジャパン
下村光生
マーケットディベロップメントマネージャー
大きな特徴の一つが、高度な音響の技術やノウハウがなくても会議システムを構築できる点だ。下村マネージャーは「会議室に音響や映像の機材を導入する際、マイクやスピーカー、アンプなどの機材をどのように組み合わせるかのシステムインテグレーションが必要だった」と述べ、従来の製品を使用して会議システムを構築する場合、専門知識をもつエンジニアが個別に設計しなければならず、時間もコストもかかる傾向にあったとしている。
IntelliMix Room Kitは会議室の規模に応じて4種類のキットが用意されており、部屋の広さに合わせてキットを選択するだけで、必要な機材を一式導入できるのがメリットという。スピーカーフォンは一般的なオフィスのグリッド天井のパネルと同じ一辺60cmの正方形サイズとなっているほか、ミニPCとの接続には取り回しやすいLANケーブルを採用するなど、設置のハードルを下げるさまざまな工夫が取り入れられている。
大型ディスプレイの下などに取り付けるバー型の会議用オーディオ機器もあるが、シュア・ジャパンでは、それらの機器と比較した天井取り付け型の優位性として、着席位置を問わずさまざまな会議参加者の声を均等に集音できる点を挙げる。また、同社製品では足音やタイピング音などはなるべく拾わず、人の声だけを鮮明に伝えられるよう、音質が最適化されているという。
天井に取り付けられたIntelliMix Room Kitのスピーカーフォン
下村マネージャーは「誰もが公平に、容易に、かつ安全に使える会議の環境を用意することで、コラボレーションが進む」と話し、ハイブリッドな働き方の推進には音声を明瞭に伝えることが不可欠になると訴えた。
マイクをはじめとする音響機器メーカーとして知られる米シュア(Shure)は、1925年の設立から今年で100年を迎えた。日本地区の事業を統括するシュア・ジャパンの安永東満・ディレクターは「当社は世界的なスポーツ大会などを含め、ミスの許されない環境で100年にわたり音響のプロの方々に信頼されてきた。会議用のシーリング(天井型)マイクも最初の製品は約40年前に開発した」と述べ、今後は一般企業に向けた同社のテクノロジーの提供をさらに加速していく方針を示した。
シュア・ジャパン
安永東満
ディレクター