WORLD TREND WATCH

<WORLD TREND WATCH>第89回 IBMのEX-A技術

2002/01/21 16:04

週刊BCN 2002年01月21日vol.925掲載

 01年12月、IBMはエンタープライズX-アーキテクチャ(EX-A)技術を盛り込んだインテルサーバー「x360」を米国で発売開始した。EX-AはIBMがメインフレームやUNIXサーバーで培ってきた高性能サーバー機能を、量販されるインテルの32、64ビットサーバーに移すための総合技術で、コードネーム「サミット」と呼ばれていた。EX-Aはインテルベースで4-WAYのSMPサーバーを構成でき、このノードを最大4つクラスタリング接続して、最大16-WAYの大型インテルサーバーに拡張できる。

サーバー統合を狙う

 IBMが計画するEX-Aの狙いの1つは32ビットと64ビットで同一技術を採用することで、インテルのXeonなど32ビットサーバーを容易にItanium、McKinleyなどIA-64ベースの64ビットサーバーに移行させることだ。同時にインテルサーバーをローエンドのeビジネスサーバーとして使えるよう堅牢性を高め、サンが席巻するローエンドUNIXサーバーを攻撃することもIBMは狙っている。IBMはローエンドをEX-Aを実装したインテルサーバーで、ハイエンドは自社最上位のUNIXサーバー「レガッタ」により、サンを挟撃する戦略を実現した。

 IBMはインテルチップの高発熱対策として水冷式ヒートシンク装置を開発して、インテルXeon MPやItaniumに実装して、SMP型高性能サーバーを薄型シンサーバーとして1ラックに挿入することを可能にした。x360では、1.5または1.6GHzのXeon MPチップ4-WAYサーバーを3ラックユニット(133ミリ)まで薄型化した。従って1サーバーラックで16WAYのインテルサーバーを挿入できる。これによって企業内に多数導入されたインテルサーバーによる設置スペース拡大、サーバーのケーブルジャングルに悩むユーザーを1台のラックマウント型インテルサーバーへ統合するサーバーコンソリデーションも積極的に推進して、他社サーバーのリプレースを行う。


 IBMはLinuxメインフレームで最大4万台、ミッドサーバーiSeriesでも30台の既設サーバーをコンソリデーションできるので、多くの他社サーバーの統合に成功してきた。こうしてサーバー市場の覇権を目論むIBM戦略のキーツールはこの一連の強力なサーバーコンソリデーションである。

 米キガ・インフォメーション・グループのシニアアナリストのブラッド・デイ氏はIBMのサーバー戦略について次のように解説する。

 「今回のx360発売はIBMが計画するサーバー戦略第1弾のミサイルだ。IBMはCES(コンピュータ・エンバイアロンメント・コンプレックス)と呼ぶ新しいコンピュータ環境を謳い文句に、他社インテルサーバーを次々とリプレースして、インテルサーバー市場でも独占的シェア獲得を狙っている。この戦略でIBMは独シーメンスにサーバーを全面供給する富士通とも提携して、日欧でも自社技術を普及させることを計画している」。

 2002年、世界のIT業界はIBMサーバー戦略に目が離せない。(中野英嗣●文)
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