どうなる? PCリサイクル

<どうなる? PCリサイクル>14.どのように回収するか

2002/02/11 16:18

週刊BCN 2002年02月11日vol.928掲載

宅配便事業者の悩み

 家庭から出る排出パソコンは、家庭まで取りに行く必要がある。経済産業省では、この収集運搬費をデスクトップは1500円、ノートは1000円と試算している。

 一方、メーカー側は、デスクトップのリサイクル処理費用は3000-4000円と試算していることから、仮にデスクトップ1台を排出するとすれば、収集運搬費の1500円を足して合計4500-5500円となる。

 家電リサイクルの「指定引取場所」になるなど、全国規模で実績がある日本通運エコビジネス部の麦田耕治エコビジネス専任次長は、経産省の「デスクトップの収集運搬費1500円」という試算について、「微妙な数字」だと指摘する。

 一般消費者にとって、デスクトップ1台の処理費用は「決して安くない金額」。これ以上、収集運搬費やリサイクル料を高くするのは難しい。

 メーカーのリサイクル責任は、指定引取場所以降の過程のみ。

 家庭から指定引取場所までは、ユーザー本人がもっていくか、宅配便事業者などに委託しなければならない。宅配便事業者は、パソコンリサイクル事業に乗り出すことで採算が合うのかどうかの判断を迫られている。

 宅配便事業者が懸念するコスト要因は、(1)法令により、宅配便が扱う一般の荷物と廃棄物の“積み合わせ(混載)”が許されておらず、廃棄物専用のトラックを用意する必要がある、(2)系列会社、関連会社、全国の収集・積み替え拠点など、排出パソコンを扱うすべての関係会社に廃棄物の許可取得が求められる、(3)排出パソコンは、紛失すれば廃棄物処理法違反、破損すれば中古利用ができなくなるなど、丁寧な扱いが必要になる――といった点にある。

 麦田次長は、「現在の自治体と同じレベルの回収を行なうのであれば、1000-1500円の収集運搬費用で十分採算が合う」と指摘する。

 「自治体と同じレベル」とは、(1)排出当日、排出者(利用者)は一般公道(道路)にパソコンを出し、自治体側は都合の良い時間に回収する、(2)回収時、排出パソコンに収集運搬料金の支払い済み証明書が添付されていれば、利用者に直接受領書を渡さずに回収できる、(3)排出パソコンを誰かが盗んだり、あるいは雨に濡れて壊れたとしても、収集運搬側はそれに対する責任を取る必要がない――というものだ。

 仮に「宅配便と同じレベルにせよ」となった場合、(1)排出者の自宅まで取りに行く、(2)直接受領書を手渡し、宅配便側の控えはそのままマニフェスト(廃棄物管理伝票)として使い、このマニフェスト伝票は最終的にリサイクルするまで追跡調査できなければならない、(3)廃棄物処理法上、紛失は許されず、雨に濡れて壊れれば中古利用ができなくなるため、リサイクル(3R)の精神に反する――など、非常に厳格なものになる。

 麦田次長は、「自治体の現状では、パソコンなど家庭からの粗大ゴミはクシャクシャっと粉砕処理することが多く、電子機器のリサイクル回収には向いていない。パソコンなどの精密機器をきちんと回収しようとすれば、『自治体レベル』ではダメで、そうなると、どうしてもお金がかかる」と打ち明ける。

 「家庭からの回収依頼の電話に対し、宅配便側のコールセンターで梱包状態、荷受け時間などを細かく聞いているだけで、すぐに5分、10分が過ぎてしまう。これではたして採算が合うかどうか」という見方もある。

 一般廃棄物ならではの難しさもある。日本通運の場合、全国で常時240社の系列会社、取引会社の協力を得ながら流通網を構築している。中元や歳暮の繁忙期には、仕事を委託する企業だけでも1000社近くに達する。

 「これら関連企業のトラック、集積所などのすべてに廃棄物の許可を取ってもらうのは事実上不可能」と、法整備と回収コスト低減の両方を解決する必要性を指摘する。(安藤章司)
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