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<OVER VIEW>IT市場減速下の米メーカー決算分析 Chapter6

2002/04/08 16:18

週刊BCN 2002年04月08日vol.936掲載

 01年、世界市場のパソコン出荷台数が減少したため、インテルの売上高は大幅に減少した。しかしマイクロソフトは堅調にこれを伸ばした。インテルは市場縮小や投資評価損で大幅な減益となったが、マイクロソフトは若干の減収だ。しかし、マイクロソフトのパソコンソフト売上高の伸びに陰りが出ていることも否定できない。ウィンテル(Wintel)両社は、今後ともパソコン市場が90年代後半のように大きく伸びるとは考えていない。このためウィンテルはともにパソコン以外に経営資源を投入し、事業領域の拡大を急ぎ始めた。(中野英嗣)

ウィンテル収益力に若干の陰り

■有力各社のパソコン事業、軒並み赤字へ

 ガートナーによると、01年世界のパソコン市場では、出荷台数が前年比4.6%減の1億2806万台であった。米国の減少率は大きく11.1%だ。00年の前年比は世界市場が13.9%増、米国が10.0%増であったので、90年代後半から続いてきたパソコンの2ケタ成長に急ブレーキがかかっている。

 このようなパソコン市場減少下において、デル1社のみが出荷台数を18%も伸ばし、米国に続いて世界市場でもコンパックを押さえてトップの地位を確保した。

 トップとなったデルは減益ながら18億ドル弱の純利益を計上したが、HP、コンパック、IBM、ゲートウェイなど米有力メーカーのパソコン事業は軒並み大きな赤字に陥った。コンパックのパソコン事業であるアクセスは5億8700万ドル(763億円)という巨額純損失だ(Figure31)。

 この苦戦するパソコンメーカーと、マイクロソフト、インテルのウィンテル陣営決算がどのように連動するかを世界のIT業界が注目している。

 マイクロソフトの純利益は73億4600万ドル(9550億円)と相変わらず巨額であるが、インテル純利益は12億4600万ドル(1620億円)と大幅に減少した。世界のパソコン市場とウィンテル決算は無関係ではない。両社の売上高純利益率と総利益率がこれを実証する。

 マイクロソフト総利益率は01年6月決算までは86%台を維持していたが、01年12月半年決算では82.5%まで下がった。インテル総利益率も00年の62.5%がピークであったが、01年にはこれが49%強と大幅に低落した(Figure32)。

 純利益率もマイクロソフトは00年の41.0%をピークに、01年12月には25.7%まで下がり、インテルは00年の31.2%から01年には4.6%と大幅に低落した。両社ともパソコン市場の落ち込みの影響を大きく受けてはいるが、それ以上にこれまでに巨額投資した株式の低落影響を受けている。

 しかし、00年でもパソコンメーカーの黒字維持が苦戦するなか、マイクロソフトの60%台、インテルの30%台の純利益率は異常に高く、これでウィンテルは世界パソコン市場の利益を独占していると非難されたのは当然であろう。

■パソコン市場動向を反映するインテル決算

 95年からウィンテル陣営のインテル売上高は急激な右肩上がりの状態を続けた。これより95年162億ドル強であったインテル売上高は、5年後の00年に2.1倍の337億ドル強に達した(Figure33)。

 しかし、01年には21.3%も売上高が大幅に減少した。売上高上昇とともにインテル総利益率も51.8%から62.5%と、10ポイント以上上昇した。

 増加する売上高にともなって、純利益も95年の35億6600万ドルから00年には3倍の105億3500万ドルに達していた。00年の絶好調決算から01年にはインテル売上高、総利益、そして純利益が大きく減少した。01年同社総利益は前年比38.1%減の130億5200万ドルとなった。

 さらにインテルは01年決算で、投資株式や買収企業株式の評価損などで23億3800万ドル(3039億円)という巨額償却を実施した。これによってインテル営業利益は前年比78.3%減となった。インテルの大幅な減益は前年比売上高の21.3%減、総利益率の13.3ポイント減、そして巨額評価損償却によるものであった。

 パソコン市場の急速な回復は望めない。このためインテルはパソコン・プロセッサ一辺倒から事業領域を拡大している(Figure34)。

 しかし00年、同社売上高でプロセッサ事業は80.8%と高い構成比となっている。インテルはコミュニケーション、ワイヤレス・コミュニケーション&コンピューティング事業にも注力しているが、それぞれの売上構成比は9.7%、8.4%にとどまる。

 インテルのセグメント別業績ではプロセッサのみが黒字で、他事業はすべて赤字だ。パソコン市場が低迷し続ければ、インテルは新規事業領域での黒字確保が大きな課題になるといえよう。同社は携帯電話プロセッサも発表した。

■陰りあるも、堅調なマイクロソフト決算

 ウィンテル陣営の一翼、インテルが大幅減収減益に陥るなか、マイクロソフト決算は相変わらず堅調であるといえよう。

 01年6月マイクロソフト売上高は前年比10.2%増の252億9600万ドルに達した。同年純利益は22.0%減の73億4600万ドルであった(Figure35)。

 増収減益ではあったが、同社純利益率は25.7%と相変わらず高い。異常に高かった同社総利益率、純利益率と比べると、マイクロソフトにも若干の陰りが指摘できよう。01年12月の半年決算では前年同期比売上高は12.6%増、純利益は26.2%減の増収減益であった。

 しかし、マイクロソフトが世界のパソコン業界の利益を独占している動向に変化はない。マイクロソフトはインテル以上にデスクトップソフト依存であった経営戦略を多角化している。

 01年12月同社デスクトップアプリケーション売上高は前年同期比0.4%という微増であった(Figure36)。

 しかし、デスクトップOSはウィンドウズXP発表もあって、15.8%増となった。マイクロソフトはサーバーOSやミドルウェアのエンタープライズ商品と、Xbox発売に見られるようにコンシューマソフトウェア&機器に注力し始めた。

 エンタープライズ商品売上高は、前年同期比8.8%増となって売上構成比も17.9%までに高まった。またコンシューマ関連売上高は同社ブランド初の本格的ハード販売となったXboxが01年秋に米国で発売されたために、前年同期比72.4%増で、売上構成比も12.2%となった。

 マイクロソフト自身は、これからは世界パソコン市場が大きく伸びるとは考えていない。このためエンタープライズ、コンシューマ商品を大きく伸ばすと同社ビル・ゲイツ会長も語っている。

 しかし、エンタープライズにはUNIX、Linux、コンシューマにはソニーのプレイステーション2、任天堂ゲームキューブという強敵が控えているのも事実だ。
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