振り上げた拳をどう下ろすのか――。日本レコード協会がパソコンで音楽を聴けないようにする音楽CD規格「コピーコントロールCD=CCCD)を発表してからおよそ3か月が経過した。これは、パソコンで音楽をデジタル複製できることに対するレコード業界の「緊急避難的な報復措置」である。

 本来ならば、パソコン業界としてなんらかの対応が必要な時期であるにも関わらず、「具体的な話し合いはほとんど進んでいない」(関係者)という。

 コピーコントロール(複製制御)に詳しいオンキヨー営業企画部・大林忠信担当部長は、「われわれオーディオ業界では、デジタル技術の登場時から、複製制御技術を全面的に採用している。複製制御を簡単に言えば“世代管理”。原版に対して“子”に当たる一次複製までは認めるが、“孫”に当たる二次複製は認めない技術を指す」

 「例えば、音楽CDからMDやCD-Rへの複製はできるが、MDやCD-Rからさらに別の媒体への複製は認めないことで、『私的複製』を制御している。こうしないとレコード業界や制作者の権利を守れない。しかし、今のパソコン業界は、この点に関する配慮があまりにもなさすぎる。レコード業界が独自規格のCCCDを出して自己防衛しようとするのは当たり前」と話す。

 カシオが5月末に「CCCDは現行の音楽CD規格に準拠していない特殊なディスクであるため、当社CD再生機器における動作や音質の保証はできない」と明言。ソニーでも「正規の音楽CD規格以外のディスクの再生は保証できない」とする。

 松下電器では「すでに市場に出ているCD再生機器についての動作保証はできない。新しく発売するCD再生機器についてCCCDの動作を保証するかどうかは未定」と、各社ともCCCDへの対応には消極的だ。

 メーカー関係者は、「オーディオなどCD再生機器でもパソコンに使うCD-ROMドライブを使うこともある。これを現在のCCCDのように『CD-ROMドライブでは一律再生できない。あるいは再生できても音が悪い』となれば、CD-ROMを使った新しい商品開発の芽を摘むことになる。パソコンをミュージックサーバーやジュークボックスに仕立てた新商品や従来型のラジカセでも、パソコンと同様のMP3などの音楽ファイルを再生できるようにする新商品など、今後の新製品の開発に悪影響を与えるのは必至」と、不都合を訴える。

 大林担当部長は、「今、レコード業界とAV・IT業界は、お互い“振り上げた拳をどう下ろすか”で、相手の出方を見ている状態。オーディオ業界では複製制御の仕組みがしっかりできあがっているが、パソコン業界ではまだほとんどできていない。見方によっては、もうしばらく“パソコンで音楽が聴けない”ようにしておくのが業界にとって“よい薬”となるのかもしれない。頭を冷やして真剣に複製制御へ取り込む足がかりになる」と、パソコン業界の考え方を根本的に改める好機だと訴える。

 別の関係者は、「パソコンで音楽を聴くには、少なくともハードディスクへの一次複製(子の作成)までは許さないと、パソコンの編集能力が活かせないし消費者も納得しない。要は、ハードディスクから“外に出さなければいい”という話ではないか。仮に別ハードディスクやMDなどへ複製するときは、ハードディスクの『子』を消して“移動”させるという方式であれば問題は大幅に軽減できる。これは業界の足並みが揃わないと実現できない」と指摘する。

 これまでパソコン業界側は「パソコンは汎用機であるため音楽CD向けの特別な施策は打てない」と言い訳してきた。だが、音楽CDが聴けなくなることで受ける打撃を考えれば、いつまでも“汎用”では通らない。“AVパソコン”、“マルチメディア”として打って出るならば、早急にCCCD問題を解決することがパソコン業界に求められている。(安藤章司)