e-Japan最前線

<e-Japan最前線>11.総務省のIT政策大綱

2002/09/16 16:18

週刊BCN 2002年09月16日vol.957掲載

インフラ整備から利用促進へ

 平成15年度(03年度)予算の概算要求が8月末に各省庁から財務省に提出された。総務省でも地方交付税交付金を含めて総額約20兆円の概算要求を行ったが、うちIT関連予算では14年度当初予算額に比べて54.4%増の1044億円と大幅な増額を要求。これに合わせて、今後のIT関連施策の基本方針をまとめた「平成15年度IT政策大綱」も策定、公表した。

 IT政策大綱は、旧郵政省時代から毎年策定しているものだが、今回の15年度版は今年6月に策定されたe-Japan重点計画-2002との整合性を取りながら、ネットワークインフラ整備に加えて「ネットワークの利用促進を大きな政策の柱に位置づけたのが最大の特徴」(情報通信政策局総合政策課)だ。その背景には、ネットワークインフラの整備が急速に進んでいるにも関わらず、せっかくのインフラが十分に利用されていないという認識がある。

 「昨年、01年1月に策定されたe-Japan戦略で2005年までの目標として設定されたインフラ整備目標の数字はわずか1年半で達成されてしまった」。インターネット利用可能数の目標は、高速網で3000万世帯、超高速網で1000万世帯と設定されたが、すでに高速網は3500万世帯、超高速網は1400万世帯と目標をクリア。利用料金も8MbpsのADSLで月額2500円程度と、世界的に見ても最も低い水準だ。

 しかし、実利用数は利用可能数に比べて超高速のFTTHで0.3%、高速のADSLでも7%と低迷。電子商取引市場も米国の約2分の1の規模に止まっている。IT政策大綱では、「世界最高水準のネットワークインフラの整備」を推進していくために、IP化・ブロードバンド化、地上放送のデジタル化、電波の有効利用などに取り組むとともに、「ネットワークの利用促進」を大きな柱に位置づけ、電子商取引の促進、電子政府・自治体の推進、人材育成、地域経済活性化・ベンチャー支援に取り組む方針を打ち出した。

 15年度の概算要求でも、目玉は「ネットワークの利用促進」関連だ。ITビジネスの振興に積極的な地方公共団体で魅力的なビジネス環境を先行的に実現する「ITビジネスモデル地区構想」では、82.7億円を要求。新規に5億円を投入してIT利用・サービス実験を集中的に展開する事業を実施したい考え。

 電子自治体関連では、共同アウトソーシングの推進として32.4億円を新規要求する。複数の地方自治体の業務を標準化し、民間企業のノウハウ・システムを有効活用することで、住民サービスの向上と地方自治体の業務改革、IT関連地場産業振興などによる地域経済の活性化を図るのが狙いだ。複数の自治体をまとめることで、IT化が遅れ気味の自治体を支援する効果も期待できそう。

 



 電子商取引関連では、総務省でも企業のIT投資を促進するための「ITネットワーク化投資促進税制」の創設を打ち出した。また、電子商取引を行う場合、第3者に証明することができる有効なタイムスタンプ(時刻認証)を安全に発行するための研究開発・実証実験を実施したい考えで、新規に3.5億円を要求している。

 消防庁関連でも、高度消防防災情報通信ネットワークシステムの構築で15年度は8.1億円(前年度0.6億円)を要求。防災情報共有化のために国・地方自治体・住民を結ぶネットワークの構築に着手する計画だ。IT政策大綱では、情報通信審議会などの場を通じて、将来想定される社会経済の枠組みについて総合的に検討していく方針も打ち出したが、ネットワークの利用促進のためには省庁の壁を越えた連携がますます重要になりそうだ。(ジャーナリスト 千葉利宏)
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