前回までは、中小企業を取り巻く環境からIT化の可能性を探ってきた。今号から数回に渡り、中小企業のITニーズそのものを分析してみたい。

 企業がコンピュータを導入する場合、その適用分野はまず業務関連だろう。販売管理、財務、給与のいわゆる「販財給」の3分野は、どの事業会社にとっても等しく基幹の業務である。

 そのなかでも、とくに販売管理がIT化の“肝”になると見ている。

 ある金属卸業者A社を取材したところ、大きな格差に驚いた。A社はつい最近、4万円の給与計算ソフトを購入し、手計算からパソコン処理に切り替えたばかりだ。ようやくIT化に取り組み始めたものと思っていたが、とんでもなかった。「最近新しく購入した伝票発行システムの価格は500万円。販売管理にはお金がかかっている」

 A社は多額のコストをかけ、オフコンで販売管理を手掛けていたのだ。ダイアルアップのインターネット接続、1人1台まで行き渡っていないパソコンなど、お世辞にもIT化が進んでいるとは言えないA社が、販売管理のオフコンには500万円もかける。

 3年前の西暦2000年問題で、オフコンからオープンなパソコン環境へのシフトは進んだと思われたが、どっこい中小の販売管理向けでオフコンは根強く生き残っている。

 あるITコンサルタントは、「販売管理では、これといったパソコンパッケージソフトもなく、企業も危険を冒してまで、新しい技術を取り入れようとしない。高額なオフコンを維持しているケースは依然多い」と話す。

 もちろん、オフコンもコンピュータである。それが企業経営で本当に役立つなら問題はない。

 ただ、孤立したオフコンでは、社内外のシステムとの連携や、ネットを活用した電子商取引の実現は望めない。

 しかもA社のように、高コストなオフコンを維持するがゆえに、均衡の取れたIT化が遅れる可能性もある。

 逆に言えば、販売管理のIT化には大きな潜在需要がある。本当に中小企業があまねく受け入れられるパソコンベースの販売管理ソフトが登場してきた時、中小のIT化は一気にボトルネックを通り抜けるのではないか。(坂口正憲)