視点

究極の無線LAN

2002/12/02 16:41

週刊BCN 2002年12月02日vol.968掲載

 わが家では最近、導入したばかりの無線LANを停止し、ケーブルLANに戻した。無線LANが簡単に盗聴される恐れがあることを実感したためだ。自分のパソコンにLANカードをつけ、オフィス街を車でちょっと走っただけで、あちこちから無線LANの電波が飛び込んでくる。電波ジャックしようと思えば簡単だ。暗号をかけているLANは3分の1もない。その道のプロにいわせると、暗号をかけていてもIDやパスワードくらいなら簡単に解読することができるらしい。

 インターネットの足回り回線として無線LANは、ファーストフード店やホテル、空港や駅など公共の場所でも使われるようになった。ケーブルが不用で、しかも高速通信が可能という点が受けている。今後通信速度がさらに高速化されれば、普及に加速度がつくだろう。だが、問題はセキュリティだ。だれでも電波を乗っ取れることを逆に利用して、無線LANを数珠繋ぎにして、一気に公衆網を構築しようというビジネスも米国では出てきた。

 もうひとつの問題は電波の健康への影響である。微弱電波の健康への影響はまだはっきりしていないが、電子レンジとほぼ同じ周波数を利用していることから、電子レンジのなかで暮らすのと同じで気味が悪い、という人もいる。

 赤外線無線LANもあるが、赤外線を直接アンテナに向けなければいけない、アンテナと端末の間に影ができると通信が途切れるなどの難点もある。

 安全な無線LANはないのか、探していたらその技術の芽はあった。白色LEDを利用した通信である。あと5年で室内の照明は白色LEDに切り替わるといわれる。その白色光にデジタル信号を乗せようという研究が慶応大学理工学部の中川正雄研究室で進められている。

 白色照明なら健康に影響はない。光を遮断すれば盗聴される心配もない。何より、ギガビット以上の超高速通信が可能になる。壁照明にすれば、影で信号がさえぎられることもない。

 この研究はいわゆるトップ30大学の研究テーマ(センターオブエクセレンス)に採用された。中川教授は「無線電波の悪影響が心配される宇宙船、病院などから利用されるようになるだろう」という。無線LAN並みの価格が実現できたら、究極の無線LANになるのは間違いない。
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