この連載も最終回を迎える。2002年後半、景気の停滞感は強まり、政治のイニシアチブもいまだ見えてこない。マクロで見れば、中小企業を取り巻く環境は厳しさを増している。

 それでも日本が経済再生を果たす過程で、中小企業のIT化は必ず進むだろう。というより、それは経済再生を可能にする1つの必須条件である。03年以降の経済見通しは不透明だが、中小での潜在需要は日増しに拡大する。それは間違いない。

 ただ、「中小企業」という言葉にとらわれない方が良いと思う。「何をいまさら」とお叱りを受けそうだが、自省の念を込めて、最後に申し上げたい。

 中小企業の総体を示すものとして、よく用いられるのが「650万事業所」「240万法人」などの数字だ。大局的なマーケティング分析では、確かにこれらの数字は重要だろう。だが、現実のITビジネスで、これらの数字はほとんど意味をなさない。

 実際、「市場の1、2%でもシェアが取れれば、大きな収益になる」と挑んだ製品・サービスは、ことごとく失敗してきた。結局、何百万という数に目がくらみ、「これだけ数があるのだから、何とかなるだろう」という考えだったのではないか。

 事業所の99%、法人の95%は、いわゆる「中小企業」である。これだけ膨大な数のユーザーを一括りにした製品戦略、営業戦略が成功する確率は低い。1社1社のニーズを吸い上げるのは現実的に不可能だが、それでも規模や業者をもっと絞り込んだアプローチが必要だろう。

 例えば、会計ソフトメーカーのインテュイットは、中小企業の中でも従業員30人以下、コアは10人以下の企業に的を絞り、製品開発、営業展開をする。その過程では、比較的規模の大きな企業で採用されていた製品を自ら捨て、焦点を鮮明にした。その姿勢が同社製品の売れ行きに結び付いている。

 ITベンダーが、対象を絞り込んだ独自の「中小企業」戦略を持ち始めた時、市場に大きな波が起こる。それこそ「中小企業」は数が多い。ちょっと絞り込んだぐらいでは、市場の魅力は失われない。

 長い間、お付き合い頂き、ありがとうございました。(終わり)