HDDそのまま棄てないで!

<HDDそのまま棄てないで!>12(最終回).HDDデータ消去の重要性とは

2002/12/23 16:18

週刊BCN 2002年12月23日vol.971掲載

 3か月続いたこの連載も、いよいよ最終回を迎えた。最後にもう一度、HDDデータ消去のガイドラインが発表された背景とHDDデータ消去の重要性と正しい消去法について簡単におさらいしておこう。

 2002年1月、名古屋の中古パソコン店で見つかったパソコンのHDDには、複数の健康保険組合の診療データが残されていた。福岡県内のリサイクル店で発見されたパソコンには、福岡県警の捜査情報データが残されていた。このような事態を重くみて、電子情報技術産業協会(JEITA)パーソナルコピュータ事業委員会は、HDDデータ消去に関するガイドラインを考案し、02年4月に発表した。

 ガイドラインには、HDD内のデータはユーザーの責任で管理されるべきものであり、最終的な責任はユーザーにあると明記されている。パソコンメーカーや関連事業者に対しては「HDD内のデータ消去の重要性をユーザーに理解してもらうための啓発努力は、パソコンメーカーの責任である」とし、その方法についても言及している。HDD内のデータを消去する方法は、ガイドライン内でも詳しく説明されている。まず、「データ消去ソフトウェアを使用して現在のデータの上から別のデータを上書きし、塗りつぶす」という方法。特に、固定データを使って2度上書きするという方法が推奨されている。

 また、特殊な装置で電気的、磁気的に強磁界をかけて消す方法と、物理的にHDDを破壊する方法が紹介されているが、いずれも2度とHDDを再利用できないだけでなく、コストや手間という問題が残されている。コストと手間を負担できない場合は、データ消去サービスを利用するという方法もある。HDD内に残っているデータは、所有している個人あるいは企業の責任で完全に消去されなければならない。HDDには、個人の情報だけでなく、企業の経営情報や顧客情報など、企業機密として扱われるべき情報が潜んでいる。その情報が不用意に譲渡、廃棄したHDDから流出してしまうと、被害は甚大である。

 企業としての信用を失ってしまうだけではなく、場合によっては、そのHDDを廃棄した人が損害賠償請求を受けるということにもなりかねない。廃棄するパソコンに対して手間やコストをかけるということは、一見無駄なようにも見える。しかし、その手間を惜しんで失うものは大きい。所有したパソコンの処分に関しては、最後まで責任ある行動を心がけていただきたい。(終わり)(有限会社マイカ 取締役 井上真花)
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