中国ソフト産業のいま

<中国ソフト産業のいま>5.日本を選び始めた中国学生

2003/02/03 20:43

週刊BCN 2003年02月03日vol.976掲載

 前号では、中国の大学進学ブームを背景に、ソフト技術者が大量に誕生している現状を述べた。それは対岸の話ではなく、日本のソフト産業と密接に絡む。その関わりから言っても、2003年は日中ソフト産業の関係にとってエポックメーキングな年になりそうだ。IT関連教育では中国随一の清華大学が初めて、インターンシップ学生17人を昨年末から日本のIT関連企業に派遣しているからだ。(坂口正憲)

 清華大学傘下には、先端の技術力を“売り”にする企業が200社以上あり、すでに何社もが株式公開を果たしている。学生の優秀さは世界的に知られ、清華大学からのインターンシップ学生は欧米企業から引く手あまた。従来、日本への派遣はなかった。それが初めて実現したのは、中国ソフト産業と日本の関係が深まっている証拠だ。清華大学で日本企業へのインターンシップ就職を希望した学生は200人以上にのぼり、その中から17人が選抜されたという。

 そのうち3人を受け入れたソフト開発会社、カナック(東京都千代田区)の佐藤正克会長は、「実際に彼らと接して、評判通りの優秀さを実感している。このまま当社に就職してくれればありがたい」と手放しで褒める。中国トップクラスの学生が欧米とともに、“日本”をキャリア形成の中で選択し始めている。今後も中国の大学から大量に生み出されるソフト技術者の中で、日本への意識は確実に強まるだろう。大和総研の上野真シニアアナリストは、「中国国内では携われない先端の企業システムを学ぶためにも、日系企業との関わりを重視する中国人技術者は増える」と予測する。

 例えば、日本企業向けソフト開発の実績では、中国の中でも上海と肩を並べる大連市。市内には日本語が堪能なソフト技術者が1万人以上いると言われる。大連市ソフトウェア産業日本事務所の許炎代表は、「東北三省では、中学、高校から日本語教育が盛ん。彼らが大連の理工系大学に進学、そのまま日系企業と取引のある市内のソフト会社に勤めるケースが多い」と話す。勤める先が日本企業か、日本企業と取引する中国企業かの違いはあっても、中国のソフト技術者と日本との関わりが大きくなるのは間違いないだろう。
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